多種多様なワインが発掘できる宝庫
ワイン好きにとって、見たこともないワインがたくさん並ぶワインショップほど、ワクワクするものはない。ところ狭しとワインが並べられた棚を巡ると、珍しい品種や産地のワインが揃う。未知なるワインを1本また1本と見つけると、どれを買おうか迷ってしまう…。
そんなうれしいような、困ってしまうような気分が味わえるのが「La Cantina BESSHO(ラ・カンティーナ・ベッショ)」。ここは、多種多様なワインを発掘できるワインショップなのだ。
ワインショップの前は、風変わりな街の酒屋
店主は、生まれも育ちも渋谷区神宮前という別所正浩さん。こちらのお店の前身である別所商店は、神宮前に代々続く街の酒屋さん。三代目の別所さんが継いでからは、ワインがやたら多くて、手作り弁当が人気の一風変わった酒屋だったそう。道路沿いにあったその店を大手コンビニ(セブンイレブン)に貸したのを機に、奥にあった倉庫で2011年にオープンしたのが、ラ・カンティーナ・ベッショだ。
「それまで別所商店にあったワインと僕が集めたワインでオープンしたのが、この店。酒屋時代は、1万円のワインの隣にカップラーメンがあったんで、”変な店”と呼ばれていました。でもワインショップになった途端、ワイン好きの人に”すごい店”と言われるようになったんだから、おかしいでしょ」と笑う別所さん。
どれだけの量があるかを聞いたところ、大型店ではないのに3000種類あるというから驚き。しかも、ワインの品種で数えても250種類くらいを揃えているという。どおりで見たこともないワインが多いはずだ。
地ぶどうハンターが導く、ワインバラエティの世界
別所さんが店づくりをとおして伝えたいのは、個性豊かなワインの世界を知ってもらいたいということ。
「ワインは世界一種類が多いお酒で、それがおもしろいところ。品種の名前は知らなくても、種類によって味が違うのは誰にでもわかる。つまり人それぞれ好みのワインがあるはず。そう考えると、全然難しくないでしょ。だから、市場で売れてるワインを買うんじゃなくて、自分好みのワインを見つけてほしいというのが僕の思い。みんな自分の彼女を世界一の美女だと思ってないけど、世界一愛しているでしょ。そんな感覚で選べるワインを揃えています」
元々、大学生の頃までお酒が得意でなかった別所さんがワインの魅力に導かれたのも、その多様性にある。樽のシャルドネにハマった時もあれば、妖艶な香りをもつピノ・ノワールに魅了されたこともある。そんな別所さんがいま、愛してやまないと公言しているのは、イタリアワイン。実際に、店のラインナップの半分はイタリア。それはなぜ?
「ワインの多様性を最も表現しているのがイタリアだから。20州それぞれに地ぶどう(地元品種)があって、それを尊重している。僕は、”地ぶどうハンター”を自認しています(笑)。ぶどうのバラエティを楽しむなら、間違いなくイタリアだと思う」と、その理由を聞かせてくれた。
店内のレイアウトをチェック

店内はワイン迷宮(!)になっているため、どこにどの産地があるのか、あらかじめチェックしておきたい。入ってすぐの右の棚と左の棚にあるのが、北イタリアや中央イタリア。地ぶどうハンターが見つけてきた新作が見つかるのはここ。突き当たった正面の棚には、スペインやドイツ、東欧などヨーロッパのワイン。ギリシャにも地ぶどうはたくさんあるそうなので、ここも要チェック。
その後ろにあるのが新世界やアメリカ。奥側の2つの棚を占めているのがフランスだ。ブルゴーニュやボルドーもあるが、シャンパーニュも意外に多い。そして、袋小路になった場所にはまたも南イタリアが登場。こちらにもたくさんの地ぶどうを使ったワインがある、おもしろいエリアだ。また、レジ近くには甘口のデザートワインもたくさん揃っている。
おすすめは、死ぬ前に飲みたいキャンティ・クラッシコの最高峰
左:Chianti Classico(キャンティ・クラッシコ)¥3,200、
右:Percarlo(ペルカルロ)¥7,800 San Giusto a Rentennano(サン・ジュースト・ア・レンテンナーノ)
「このサン・ジュースト・ア・レンテンナーノという生産者が好きすぎて、話をすれば1時間では足りないかも(笑)。僕にとってイタリアのキャンティ・クラッシコ(地区)最高峰と言える生産者です。それはサンジョベーゼというぶどうをワインとして体現してるから。お店でも2002年くらいから扱っています」
最高ランクのペルカルロと通常のキャンティ・クラッシコを同時に推せるのには、理由がある。
「この生産者は最高のキャティ・クラッシコを造るために、サンジョベーゼを造っています。そのうち、その年に採れた選りすぐりのぶどうを使ったのがペルカルロ。つまり、キャティ・クラシッシコもペルカルロも基本的な造りは同じ。値段の差はぶどうの品質や熟成期間だけ。キャンティ・クラッシコにしても納得いくものを造っていて、出荷量も4万本程度。普及ラベルと考えると、とても限られた量です。実際、キャンティ・クラッシコにもナンバリングしてありますよ」
時間のある時には、ぜひ別所さんのサン・ジュースト・ア・レンテンナーノへの愛を聞きに行ってほしい。
ゆっくり一人で探すのも、おすすめを聞くのもOK
店内の壁沿いはほとんど商品が陳列されているが、その隙間を埋めるように訪れた生産者のサインがある
買い物をするときは、じっくり一人で見て回っても、別所さんにワインの話を聞くのもOK。店内には、袋小路のような場所もあるが、後ろから焦らされるようなことはない。
「僕自身、ワインショップに行って、”バッグを預けてください”というような接客はやりたくないからね」と別所さん。ワイン好きの人は時間を忘れて、気になる1本を見つけてほしい。
もちろん、ワイン初心者も大歓迎。好みを伝えて相談するのがおすすめ。別所さんは、インポーターの試飲会に足繁く通っていて、店内のすべてのワインを試飲しているというから、どんな味がするのかも教えてくれる。もちろん、生産者のこだわりもとことん教えてくれる。
「基本的に自分がいいと思ったワインしか仕入れていないから、何でも聞いてください。1時間でも2時間でも話します。店内には1000円台のワインもありますが、ほとんどが2000円以上。それだけのお金を出してもらうんだから、納得して買ってほしい。もちろん話を聞いたからといって買わなきゃいけないということもない。入ったら絶対買わなきゃいけない店なんて、おかしいでしょ(笑)」
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