ワインショップ一力商店(蒲田)

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元シェフの3代目が料理との相性を楽しく提案

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一力商店は、蒲田にある街の酒屋として歴史が始まった。2代目がワインショップへの転換を図り、1980年代にはボージョレー・ヌーボーを売り出していたという。現在、お店に立つのは、2代目の妻で店主の柴原多美子さんと息子である裕さん。

お店のコンセプトは、「安くておいしいワインを地域の人に飲んでもらいたい」。それに加えて、4年前に裕さんがお店に入ってからは、料理人の経験を活かし、ワインに合う料理の紹介やワイン産地の郷土料理を交えて、楽しさを伝える店になった。店内には「ワインラボ」という名前のテイスティングスペースがあり、手作りタパスをつまみに試飲もできる。ワインショップ一力商店は、気さくに気楽にワインの楽しさを教えてくれるお店なのだ。
得意分野を出し合い、親子でワインショップに立つ

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母・多美子さんは、2代目が始めたワインショップを立ち上げから支え、現在は店主としてワインショップに立つ。日本でボージョレー・ヌーボーが流行る前からワインを売っていたため、当時は「ボンジョレある?」「白がほしい」という状況だったそう。こうしたお客さんに丁寧に説明を繰り返し、蒲田にワインを根付かせてきた。

一方、息子の裕さんのキャリアは料理人からスタート。都内高級ホテルのダイニングで修行した後、横浜の馬車道にあるワインバルでシェフを務めてきた。そこで、ワインが好きになったこともあり、4年前に実家であるワインショップに入った。

「ワインは、常連さんの顔が浮かんで、こんな人に売りたいとイメージできるものを仕入れます。一方で、こんな食事に合わせたいという個性が見えるワインも大切。ワインは一人でグビグビ飲むお酒ではなく、食卓を囲んで楽しむもの。いろんなシーンでいろんなタイプの方に紹介したいと思えるワインを揃えています」と裕さん。料理の技術だけでなく飲食業で培ったサービス精神あふれる心意気がワインショップでも役立っている。

地域性が出たワインをおもてなしの武器に

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一力商店の店内には、約500種類のワインが並ぶ。仕入れを担当する裕さんにこだわりを聞いたところ、「その産地の地域性が出たワインを選んでいます。海沿いの温暖な土地で育ちおおらかさのあるもの、山岳部の冷涼な土地で酸がしっかりしているものなど、想像しうるテロワール(生育環境)の特徴が出ているワインだと、お客様の興味を惹ける説明がしやすくなりますね」。

実際に、どんな説明をしているのだろう?
「そのワイン産地の気候風土を説明して、どんな食文化や郷土料理があるかをからめます。例えば、大西洋に面したスペインのガリシア地方のアルバニーリョ種のワインだと、魚介類を食べる文化があるので、ピッタリくるシンプルなレシピと共にご紹介。そこまで詳しく説明するのは、ワインをお客様の武器にしてほしいから。ホームパーティーを自宅で開くときや手土産としてワインを持って行くときに、
活かしてもらえば、お客様自身がおもてなしをするときのホスピタリティになる。そうした価値がつけられると、ワインを値段以上に思っていただけますよね」と、教えてくれた。ワインの楽しい時間を提案するだけでなく、社交の広がりをお手伝いしてくれるのだ。

店内のレイアウトをチェック

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店内は、ワインショップとワインセラーとワインラボの3つに分かれている。

<ワインショップ>
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自動ドアを入ってすぐにあるのが、デイリーに利用しやすい1000円台のワイン。試飲もでき、夕飯との相性を聞けば、食卓に利用できるのがうれしい。和食にも合いそうな白ワインが揃っていた。

ワインショップの中ほどにあるのが、おすすめワイン。スペインや南仏など、コストパフォーマンの高いワインが豊富に揃えられている。壁沿いに置かれているのは、ハードリカー、スパークリングワイン、2000円以上のワイン。ウイスキーも多めに扱っている。反対の壁沿いには、冷蔵ケースがあって、スパークリングや白ワインが。冷えひえを飲みたいときは、ここをチェックしよう!

<ワインセラー>
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奥にあるワインカーブは、ドアの隔たりがなく入りやすいが、しっかりとエアカーテンで仕切られ、内側は適温に冷やされている。

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ワインカーブの奥には、フランスのグランヴァンや熟成を経たヴィンテージがずらり。しかし、そればかりではなく、3000円以上のワインや自然派ワインもあるので、気軽に入ってほしい。

<ワインラボ>

自動ドアで入って右奥にあるエリア、もしくは左の扉から入ったエリアがワインラボ。ワインの試飲とタパスの注文ができ、そのマリアージュを“研究する”のが目的。ここを利用するには、コインを1枚350円または3枚1000円で購入し、タパスやグラスワインを注文する。カウンターが2つあるので、空いた席でいただこう。ほとんどの人が1杯では済まず、隣の席で出会った人と、時間を忘れて楽しんでしまうそう。

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▲冷蔵ケースには、生ハムやパテ、ラタトゥイユなどが並ぶ 
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▲ 試飲ワインとおつまみは黒板からチョイス。おつまみは、冷蔵ケースのタパスだけでなく、
アイスバインやリゾットなど厨房でできたてを作ってもらうこともできる

おすすめはリアスバイシャスのシャブリ?!

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「シエス」 2013 ロドリゴ・メンデス ¥3,460

おすすめとして紹介してもらったのは、ロドリゴ・メンデスの「シエス」。スペインのガリシア地方リアス・バイシャスのアルバニーリョを使ったワイン。取材日に店内で開催されていた「大西洋」をテーマにしたワイン会用に出されていたもの。

「味わいとしては、上質なシャブリのイメージです。生産者のロドリゴ・メンデスは、ルフレーブを愛するモンラッシェ好き。それが納得できる造りです。シャルドネほど酸が丸くなく仕上がっています。タコに、ちょっと濃いめのエキストラバージンオリーブオイルと岩塩、フレッシュハーブ、パプリカパウダーをかけたシンプルな料理に合わせてみてください」。さすが料理人だけあって、マリアージュのアドバイスも的確にくれた。

月2回のワイン試飲会のお知らせはFBで発信

一力商店では、月2回、ワイン会が開催されている。日程は、第1土曜日と第3金曜。第1土曜は地域で暮らす人に向けて、「1000円台赤ワイングランプリ」などワインに親しむテーマが設けられている。一方、第3金曜は地域で働く人に向けて、「大西洋のワイン」などワインの知識を深めるもの。予約なし、出入り自由で開催されている。テーマや時間・価格はFacebookで公開されるので、ぜひフォローしてほしい。

ワインショップ一力商店
東京都大田区蒲田4-22-14
10:00〜21:00  日祝休
03-3732-3541
HP: http://kamata-de-wine.sakura.ne.jp
FB:https://www.facebook.com/kamata.de.wine/

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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