essentia エッセンティア(学芸大学)

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毎日の暮らしに安心できるナチュラルワインと食材を


ワインショップは、その佇まいに店の思いが表れているものだ。エッセンティアは、天然の木の匂いが漂う無垢材の棚に、日差しやライトの光が温かく降り注ぐナチュラルで心地いい空間となっている。
実際にワインのラインナップは、ナチュラルな造りのワインばかり。イタリア20州すべてのナチュラルワインが揃い、オレンジワインだけでも常時70種類の品揃えがある。ワインだけでなく、パスタやオリーブオイル、洗剤など店の半分は暮らし全体にとって必要なもの。なかには、漁港直送の鮮魚や出来立てのモッツァレッラチーズもある。


所狭しと並べられた商品の前には、原料や作り方の情報が丁寧に書き添えられた札があり、ひとつひとつが吟味されているのがわかる。話を聞いてみると、商品選定については、オーナーのこだわりと厳しい基準があり、長く扱ってそれなりに売れているものでも、製法や原材料の栽培環境などが変われば、取り扱いを中止することもあるという。

そこにあるのは「ただナチュラルなもの、無添加のものを集めて並べるのではなく、原材料の栽培環境や製造工程まで踏み込んだ上で、“おいしく”、“人と地球に優しい”ものを選びぬき、なかなか揃うことのないラインナップから選んでほしい」という思い。口に入れるもの、肌にふれるものを安心してセレクトできる店でありたい心持ちが見えてくる。自分や家族の暮らしにどんなものを取り入れようか、つい長居したくなるお店となっている。

イタリア20州を訪れ、食のあり方に共感


エッセンティアは、2016年9月に学芸大学駅近くにオープンした。オーナーのユキトさんは、学芸大学という立地にこだわりがあったと話す。

「学芸大学には、30年前から自然食品店、20年前からオーガニックレストランがあって、天然酵母のパン屋さん、ナチュラルワインが飲めるお店もどんどん増えていました。僕自身、この町で暮らしていて、そうしたお店のよさを理解している方が多い場所だなと感じていました。そんな方にこそ、厳選して選んだ少量生産のワインやチーズ、食材などをその製法や栽培方法の違いを含めてご紹介し、選択肢の幅を広げていただきたいという思いがありました」

店内を見渡すと、オリーブオイルやパスタ、チーズ、20州すべてのナチュラルワインなど、イタリアから届いた食品やワインも多い。これはユキトさんがイタリアを訪れて感銘を受けたことがきっかけだったという。

「イタリアへは10回以上渡って、20州すべてを訪問しました。イタリアといえばローマやフィレンツェへ行かれる方が多いと思いますが、実は小さな村や島がおもしろい。それぞれに郷土料理や文化が発達して、州の特色が残っている。“カンパリズモ”といって、地域の伝統や食のこだわりが強く、それらが大切に受け継がれています。

僕自身、分子整合栄養医学やヨガの食事療法などを学んでいて、食事はおいしく楽しめることはもちろん、健康面への影響にも関心が高かったのですが、そうした観点からも、大好きなイタリアの食文化・食材はお店のメインで扱うものとしてマッチしていました」


その言葉どおり、店内には無農薬や無添加であることはもちろん、食文化が色濃く反映された古代小麦のパスタ、グラスフェッドミルクのチーズ、ナチュラルワインが並んでいる。たくさんあると、選ぶのに悩んでしまうが、そこで本領を発揮してくれるのが、店長の山川柾樹さん。かつて、食事も楽しめるイタリアワインバーを経営していた経験があり、ソムリエや料理人目線でアドバイスをくれる。

「夕食にどんなものを食べるかを聞いて、それに合うワインを提案させてもらいます。家族経営で少量生産の貴重なパスタを含め、チーズ、鮮魚もあるので、どんなふうに調理してワインと合わせるかも気軽に聞いてください。家庭でできるお手軽レシピもお教えしますよ」

安心しておいしく食べられる食材とワインとの距離をグッと近づけてくれるお店となっている。

ブドウの個性を引き出すナチュラルなワインを厳選

ワインは、店内奥のワインセラーと冷蔵ケースに用意されている。その数は、約500種類、1200本。イタリアワインが9割を占め、スロヴェニア、フランス、オーストリア、チェコ、スペイン、オーストラリアといった国のワインもある。そのすべてがナチュラルワイン。店で扱いを決めるワインには、ラテン語で「本質」を意味する店名ならではのこだわりがある。

「その場所にしかないものをご紹介したいと思っています。なので、自然とその土地や品種の個性がわかりやすいものとなりますね。ワインの魅力の1つでもある“香り”は、酵母の働きによる部分が大きいので、その土地やブドウ由来の天然酵母で醸されたものが9割以上になります。

また、その土地ならではの味わいとなると、土壌や土の中の微生物の働きも重要です。そのため無農薬、無化学肥料も1つの判断基準です。あとは醸造工程で、酸化防止剤を極力使わないものも重視しています」(オーナー・ユキトさん、以下同)


こうした基準があると、いわゆる最近の自然派生産者しか扱っていないと思われがちだが、伝統的に自然な造りをしているワインも尊重している。

「たとえば、バローロの巨匠アルド・コンテルノは独立する前の家系的には18世紀から、ピラーは19世紀から伝統的な方法で栽培・醸造してきました。この伝統製法を今どきの言い方にすると“ナチュラルワイン”。これはブルネッロの秀逸な造り手たちにも当てはまります。エッセンティアのワインセラーは、イタリアワインの伝統的な生産者のワインが好きな方も、ナチュラルワインから入った方も、いずれにも楽しんでいただけるラインナップになっています」

味わいのタイプとしては、ブドウの味や伝統的なものを大切にして選んでいるという。

「その土地の個性が出ているものもセレクト基準の1つになっています。ですから、国際品種ではなく、イタリアでもかなりの土着品種が選べるようにしています。バリック(小樽・新樽)を利かせたものは少ないですね。もし、濃厚なニュアンスをお好みなら、果皮まで漬け込んだオレンジワインをおすすめしています。元来オレンジワインは、余計なものを加えないでいかにブドウ由来の個性や特徴が出せるかを考えて造り出されたもの。ワインにそのすべてが凝縮されています」

また、オーナーはワイン・飲食業界以外のビジネス経験もあり、消費者目線でのワイン選びをすることもある。通常はインポーターの試飲会でワインの情報を得て仕入れるのが一般的だが、レストランやワインバーでソムリエによって提供されたものでよかったものも積極的に取り入れるようにしている。さまざまな点で、エッセンティアらしい素材本来の個性を突き詰めたワインがセレクトされているのだ。

店内のレイアウトと楽しみ方をチェック


店内の手前が食材、奥がワインセラーや冷蔵ケースなどのワインコーナーとなっている。鮮魚は表に出ていなくても、奥で保存されていることも多いので、ぜひお店のスタッフに聞いてみよう。また、キッチン付きのイベントスペースは時間貸しも可能となっている。


コストパフォーマンスに優れたワインもエッセンティアの得意分野。冷蔵ケースには、デイリーワインがぎっしり。1300円からワインが並んでいる。そのほか、本州唯一のできたてモッツァレッラチーズも並ぶ。ここを目当てに来店されるご近所のお客様も多い。


鮮魚は、兵庫県津居山港から日本海の海の幸が直送されてくる。津居山港は、春はホタルイカ、冬は松葉ガニの名産地として知られる。水揚げされたものを漁港そばで内臓処理してすぐに運ばれるので、新鮮さが違う。学芸大学駅からも近いので、東急沿線に住む人が仕事帰りに途中下車して訪れることも多いそう。


イタリアから届く食材だけでなく、日本のわかめやしょう油などもある。


店内の角打ちコーナーは、常時10種類近くのワインが有料試飲できる。黒板のようにラディコンやダミアン、ダリオ・プリンチッチなどの貴重なワインが少量ずつテイスティングできるプレミアム試飲が中心となっている。

イチオシは、味わい深くエレガントなオレンジワイン

「リボッラジャッラ ミクルス2015」ドラガ・ミクルス ¥4,800(税抜き)

おすすめとしてピックアップしてもらったのは、イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のオレンジワイン。

「ドラガ・ミクルスは、グラヴネルやラディコンともすぐ近くのオスラーヴィアの生産者です。ブドウは土着品種のリボッラジャッラを使っています。ナチュラルワインというと不安定なイメージがあるかもしれませんが、全くそういう要素がなくクリーンできれい、かつエレガントです。香りにビターな香ばしさがあって、ブラインドで出すと、グラヴネルと間違える方もいるほど。アンフォラ(甕)ではなく、大樽を使っていて、余韻も長くて素晴らしいワイン。まだ値段もそこまで高騰していませんし、日本のワインショップではほとんど流通していません。一度、手にとってみてください」

月に3〜4回レアワイン会を中心にイベントを実施


エッセンティアでは、ナチュラルワインに親しむきっかけをつくるワインイベントを実施中。普段はなかなか飲み比べることのできないレアなワインがたくさん登場することも多い人気のワイン会。エッセンティアの世界を知るいい機会となっている。


イベントスペースで開催されたプレミアムワイン会の様子。オーナーのユキトさんによるワインの説明を聞きながら、テイスティングができる。現在は、時間を区切り距離をとって安全に運営されている。出席者はほとんどが一人参加なので、気軽に参加できるのもうれしい。
またワイン会に何度も参加していると、津居山港直送の鮮魚を使った「鮨とナチュラルワインのペアリング探究会」に招待されることも。学芸大学や東急沿線に住む人、オレンジワイン好きの人は、イベントでその雰囲気を味わってみよう。

essentiaエッセンティア
目黒区鷹番3-5-2
03-6303-2559
12:00-19:00、火曜休
https://essentia.shop/
Instagram:essentia_gakudai
FB:https://facebook.com/essentiag

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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