ヒロヤショップ 三鷹カーヴ(三鷹)

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試飲会を入口に、蔵出し品質のワインを

ヒロヤショップ三鷹カーヴは地下にあり、試飲室とセラーで構成されている。普段は、店主の榊原崇弘さんが管理や執務のために訪れ、本格的な営業日はイベント開催日。こうした変則的な営業にしているのは、「蔵出し品質のワインを提供したい」との思いがあるため。
「世の中には状態の悪いワインが多すぎます。長年ワインを扱っていると、輸送や管理状態によるおいしさの違いに敏感になります。売り手として、液面が下がっていたり、吹いていたりするのを扱うのはストレスなんです。良い生産者のワインでも、状態がよくないものを寝かせて保管する気にはならないですね」
こうして考えられたのが、顧客の試飲販売会という方式。直接、手でふれるのではなく、説明を聞いて味わいを確認してから購入する方法だ。
蔵出し品質を守るためには、ワインの管理と輸入業者の選定は究極ともいえるほど、こだわっている。
元々、店は地下にあるので、夏でもフロア全体が20℃を超えることはない。さらにセラー内は、室温16℃、湿度70%に保たれ、普段は電気が消され、静置されており、管理状態は申し分ない。セラー自体も20坪(66㎡)と広いため、エアコンによる微妙な温度の変化が少なく、風の影響も受けない。
現在取引しているインポーターは、輸送体制の整ったフィネス社のみ。同社は、ワイナリーから蔵出しされたときから100%保冷車を使い、倉庫や港、船のコンテナ内でも保冷管理が徹底されている。
こうしたワインをお披露目するイベントは2タイプあり、ワインが10種類ほど並ぶ「試飲販売会」と、クラシックの演奏とセットになった「ワインコンサート」。注文したワインを後日配送してもらうか、受取るしくみ。その後は、メールマガジンでのワイン注文や試飲会の案内が届き、特別価格でワインが購入できる。蔵出しワインの味を試してみたい人には訪れてほしいワインショップだ。
*コロナ渦の期間、試飲販売会とワインコンサートはお休み中です。吉祥寺セラーの週末無料試飲が利用できます。

さまざまな試みを経て真のカヴィストへ

ヒロヤショップ三鷹カーヴの店主を務めるのは、榊原崇弘さん。1995年に大学を卒業後、家業である1Fの食料品店「ヒロヤショップ」で働き始めた。食料品店は酒販免許もあったことから、ワインブームだった当時はワインも主力商品の1つ。チリワインがよく売れていたという。
そして、98年に食料品店のビルを買い取ったのを機に、地下でヒロヤショップ三鷹カーヴの歴史が始まった。ただ、当時は食料品店の仕事に精を出しながらワインも売っていた時代。趣味のクラシックにも傾倒し、休みがあればウィーンを訪れることも欠かさなかった。
転機になったのは、2006年にワインアドバイザーを取得してから。資格勉強でワインへの意欲が高まり、翌年から「ワインアドバイザー全国選手権大会」にも挑戦した。2008年にはウィーンに通った経験を活かし、選抜試験でゴールドアワードを受賞し、「オーストリアワイン大使」に任命された。そして、2013年にはワインアドバイザー全国選手権大会で本戦出場を果たし、全国3位を獲得した。

これらのコンクールで同業者仲間に出会ったことは良い刺激となり、三鷹カーヴをワイン専門店として本格的に稼働。2007年からは楽天市場での販売をスタートした。ネット販売は1つの試みで、ほかにもビジネスの方法を模索したと言う。
「仲間のことをすごいと思ったのは、“この人からワインを買いたい”という顧客を掴んでいたこと。ワインは毎年造られ、それを輸入するインポーターがいて、ワインショップがいて、お客様がいる。それを継続的に健全なサイクルで回すことが大切だと思いました」
健全なビジネスを目指して考えられた結果、2011年頃からフィネス社のブルゴーニュを中心に扱い、試飲会での販売をスタート。蔵出し品質のワインを高く評価する顧客を獲得することに成功した。こうした顧客が増えると、顧客にとってレアなワインを入手できるメリットも増え、好循環が生まれている。また、試飲会によって顧客同士のワインコミュニティも醸成されるという副産物も。これも店と顧客をつなぐ手段の1つとなり、常連となる顧客が増えていった。
さらに2021年4月には、吉祥寺でにぎわいをみせる七井橋通りで対面販売を重視した吉祥寺セラーをオープン。新しい試みも取り入れ、独自のやり方でワインの消費を拡大。品質を守りながら、ワインを売るカヴィストとして信頼できる存在となっている。
現在、EC店舗は楽天市場ではなく、自社のオンラインサイトで展開中。

ブルゴーニュを中心にした品揃え

セラーの中には、フランスを中心としたワイン3000〜4000本が静かに眠っている。このうち8割がブルゴーニュワインで、扱っているのは40〜50生産者。ワインは1000円台から入手困難なワインまで種類は豊富。また、早くから地下のワインセラーを持っていたこともあり、貴重なオールドヴィンテージのワインもある。ここ数年はブルゴーニュがラインナップの中心になっていることについて、改めてその魅力を聞いてみた。

「味が好きなのはもちろんですが、農家が造るワインで数量が多くないのも魅力です。毎年、異なる変化があって、ドラマもある。やはりブルゴーニュのワインには、ピノ・ノワールに欠かせない気品があります。濃すぎず薄すぎず、その中でエレガンスを発揮している生産者が好きですね。実際に、現地にも行きましたが、当店で扱っているワインには蔵としてのオーラや媚びない名声があります。そうしたものを扱えるのはうれしいですね」

店内のレイアウトをチェック

店内は試飲室の奥にワインセラーがある造りになっている。基本的には、試飲室で試飲会やワインコンサートが開かれ、ワインセラーは厳重に管理されている。

試飲室にはピアノが置かれ、生産者の来日やコンサートの様子が写真で飾られている。ヨーロピアンな雰囲気が漂う静かな空間で試飲ができる。

過去の試飲会では、綺羅星のごときラインナップが並ぶこともある。試飲会の再開が待ち遠しい。

おすすめはメオ・カミュゼのピノ・ノワール

メオ・カミュゼ ブルゴーニュ コートドール ルージュ キュヴェ エティエンヌ カミュゼ2019 5,720円

おすすめしてもらったのは、メオ・カミュゼの基本となるピノ・ノワール。

「ブルゴーニュの中でも、メオ・カミュゼ、ジョルジュ・ルーミエ、エマニュエル・ルジェの3生産者が好きです。メオ・カミュゼはその中では比較的、入手しやすい生産者。2018年からはドメーヌものとネゴシアンものが分かれました。やはりドメーヌ者には魂や愛情が感じられますね。

メオ・カミュゼは濃すぎず、薄すぎず、真ん中のラインで常にぶれないおいしさがあります。比較的、量が多いことは作柄による品質をカバーするメリットもある。安定感のある味わいにつながります。ピノ・ノワールらしいエレガントさが感じられますね」

ヒロヤショップでブルゴーニュ ピノ・ノワールの入口にしたい1本。まずは、ここから蔵出し品質を味わおう。

クラシック好きにはたまらないワインコンサートとは?

ワインコンサートは、ヒロヤショップ三鷹カーヴの試飲室を利用して開かれるクラシックコンサートと試飲会を組み合わせたイベント。演奏するのは、コンクール優勝者や一流の楽団に参加する音楽家ばかり。本来、ホールクラスでしか聴くことのできない音楽家の演奏が間近で聴けるとあって、クラシックファンにはたまらない臨場感がある。イベントは、約1時間の演奏と約1時間の試飲会で構成されている。音楽家のアサインは、榊原さんがウイーンに通い詰めた頃に培った人脈が発揮されている。料金は6000円とかなりの破格。クラシックとワインが好きな人なら、ぜひ訪れたいイベントだ。
コロナ渦の期間、ワインコンサートはお休み中です。

ワインやイベントの案内は空メールから

ヒロヤショップ三鷹カーヴからの案内は、こちらのアドレスに(hiroyashop.wine@gmail.com)に、「氏名、案内希望」を書き添えてメールを送ると、案内メールが送られてくるしくみ。通常はイベントが開催されているが、現在は休止中なので、吉祥寺セラーの無料試飲などを入口に、その味わいを試してみることもできる。興味のある人は、メールを送ってみよう。

ヒロヤショップ三鷹カーヴ
東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビルB1F
イベント時に営業中(10:00〜12:00は事前連絡で入店可能)
0422-24-9901
日月祝休
https://www.hiroyashop.com/

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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