対談「隠れ銘醸地・2020年はスロヴェニアワインがブレイクする!」

東欧の国・スロヴェニアのワインは、高品質で自然な白ワインやオレンジワインの生産地として注目を集めています。隠れ銘醸地ともいわれるスロヴェニアとは、一体どんな生産地なのでしょうか? 今回はスロヴェニアワインのインポーター365wineの大野みさきさんとレストランNODOの及川博登さんにその魅力を語ってもらいました。

大野みさき

365wine代表/スロヴェニアワイン専門輸入元として買い付けからオンライン販売までこなす。

及川博登

NODOオーナー/イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の郷土料理レストランを経営している。

目次

隣国に影響を受けるスロヴェニアワイン

スロヴェニアの代表的ワイン産地・ブルダ。イタリアとの国境付近にあり、フリウリはすぐそこ!© 2020 Slovenian Tourist Board.

――大野さんがスロヴェニアワインの輸入業を始めるきっかけは何だったんですか?

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大野みさき
もう7年前ですが、ワインの仕事をしたいと渡仏し、ワインを学んでいたときです。東欧を旅する機会があって、JAMSEK(ヤムシェック)という生産者のワインを飲んだらおいしくて、すぐにスロヴェニアを訪ねました。

――どんなところに惹かれたんですか?

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大野みさき
ワインに自然なやさしさやまるさがあって、生産者もワインと同じようにやさしい人達でした。「この人が造るワインだから、こういう味なのね」と思ったときに、スロヴェニアワインを日本で広めたいと輸入業を始めました。

――及川さんは、イタリア・フリウリの郷土料理レストランNODOを経営されています。なぜスロヴェニアワインを扱われているんですか?

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及川博登
フリウリとスロヴェニアって、地続きで隣り合ってるんです。人間が国境で線を引いただけで、食文化は同じ。スロヴェニアワインは切っても切れない関係なんです。

――近隣国の影響を受けているのが特徴なんですね?

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大野みさき
気候的にも歴史的にもエリアでとらえてもらった方がいいかもしれません。スロヴェニアは、四国ほどの広さの国土ですが、アドリア海アルプス山脈に囲まれ、多様な自然環境を持ちます。
ワイン産地は大きく3つに分かれていて、イタリアに近いプリモルスカは穏やかな地中海性気候、内陸のポドラウイエは寒さの厳しい大陸性気候、その中間でクロアチア近くのポサイウエは半大陸性気候です。
ワイン産地としては冷涼なので、タイプでいうと7:3で白ワインの生産が多いですね。

ーー歴史的にも、というのは?

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大野みさき
今でこそ独立してスロヴェニアになっていますが、かつてはナチス・ドイツやイタリア王国、ハンガリー王国さらにユーゴスラビアに支配されていた時代もあります。おじいちゃん世代は、同じ場所に住んでいるのにパスポートが3回変わったという人もいるんですよ。

ーーワイン造りの歴史はどうですか?

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大野みさき
スロヴェニアでは2400年前からワイン造りがされ、それが西欧へと伝わりました。「イタリアよりも早いんだよ」とスロヴェニア人は自慢げに言いますね(笑)

白ワインとオレンジワイン、第二の聖地

ーーワイン造りの特徴については、いかがですか?

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及川博登
白ワインで有名ですが、フリウリと同じように醸したオレンジワインを造っているのも特徴です。
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大野みさき
オレンジワインは最近の流行りと思われがちですが、源流はジョージアのクヴェヴリ(甕)を使ったワインです。
1990年代後半にフリウリ周辺で起きた、祖父の時代のワインへ戻ろうという原点回帰の1つがオレンジワインでした。醸すことで果皮の成分(ポリフェノールなど)がワインを酸化から守ってくれるので、亜硫酸*の使用量を抑えたり、全く使わなかったりできる。自然なワイン造りを模索した結果なんです。

*醸造の過程で入れる添加物。発酵時に加えることで酸化などの劣化をコントロールすることができる。

ーーブドウ品種はどうですか?

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大野みさき
シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、メルロの国際品種もありますが、白だとラシュキ・リーズリングマルヴァジアレブラ 、赤だとレフォシュクといった地元品種も大切にされています。

――イタリアと共通した品種もありますね。ところで、ワインは国の主たる産業の1つなんですか?

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大野みさき
意外に思われるかもしれませんが、スロヴェニアの産業は、AIやロボティクスといった最先端の工業技術です。大量生産のワインは少なく、ほとんどが小規模生産者。この前、栽培面積を生産者の数で割ってみたら、1生産者あたり、0.77haだったんです。

――それくらい小規模だと自然なワイン造りをしている生産者も多そうですね?

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大野みさき
はい。自分たち向けのワインを造っているので、化学肥料などは使っていません。ワインだけでなく、EUの中でも食にシビアでオーガニックが当たり前の国です。

――と、いうと?

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大野みさき
自然が豊かな国でもあるので、農村部では野菜や果物、蜂蜜、オリーブオイルを作ったり、直接農家から買う人も多いですね。都市部でもスーパーにオーガニックのコーナーが大きくあります。

クリーンなワインにオンリーワンの個性

© 2020 Slovenian Tourist Board.

ーー近隣のフリウリやオーストリアは白ワインの評価が高いですが、スロヴェニアもそのようなイメージですか?

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及川博登
はい。酸がしっかりした上質な白ワインが多いと思います。
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大野みさき
それに、ミネラル分も豊かなのがワインに表れています。有名なのがアドリア海沿岸の鍾乳洞の石灰岩土壌や、オポカという泥灰土や砂岩が重なった土壌です。

――フリウリやオーストリアとも違う魅力があるとしたらどこですか?

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大野みさき
フリウリやオーストリアのシュタイヤーマルクと隣接するスロヴェニアのエリアは、ワインや食文化、言語も似通っていますが、あえて言えば、とてもきれいだと思います。同じオレンジワインでもオフフレーバー系がみられません。酸とミネラルが豊かで、クリーンというのが特徴ですね。
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及川博登
とても高価なフリウリのワインと比べたら、そこまで価格が上昇していないのも、飲食店や消費者の方にはうれしいポイントだと思います。
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大野みさき
小規模生産なので、人件費を含めると、決して安くはないんですけど、飲んだ人に満足してもらえるクオリティと唯一無二の個性を出そうとしています。私の扱う生産者もそうですが、人とは違うことをやろうという気持ちがあって、かつ勤勉。ビジネスもやりやすいですよ。

――試飲会やイベント、レストランで飲んだ方は、どのような反応がありますか?

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及川博登
大野さんの365wineが入れてる生産者のワインは自然派ですが、味わい的にきれいなものが多いので、皆さんの反応はとても良いです。アンチオレンジワインのソムリエの方にも、ヒットしている感はあります。
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大野みさき
一般の方もソムリエなどのプロも「おいしい!」と驚かれますね。ワイン通の方だと、東欧のワインにアルコール度数の高いイメージや、ナチュールワインにネガティブなイメージ*があるみたいですが、それを覆す、素直でクリーンなワインの味に喜んでもらえています。

*ナチュールワインの醸造過程で自然発酵がスムーズに行かなかった場合、オフフレーバーなどのネガティブな要素が出ることがある。

――スロヴェニアワインの人気が高まっている気運を感じますか?

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大野みさき
はい! 輸入量も3年前に比べて2倍に伸びています。知ってもらえれば、おいしいとわかってもらえるので、もっと働きかけていきたいと思います。
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及川博登
スロヴェニアワインは、輸入しているインポーターがほとんどいなかったのですが、大野さんの365wineを始め、スロヴェニア大使館も積極的。今後伸びてくる気配を感じています。

時代が求めるスロヴェニアワイン

――どんなところが今の時代にマッチしているんだと思いますか?

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及川博登
フリウリが注目を集めて、その延長で高品質なオレンジワインや白ワイン産地としてスロヴェニアをとらえているんだと思います。
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大野みさき
最近は自然派ワインがブームなので、それも大きいと思います。実際に、すでにコアなファンもいてスロヴェニアのワイン生産者を訪ねたいと、電話がかかってくることもあります。

――そうなんですね!

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大野みさき
はい。帰国後に、ワイナリーに行った感想を聞かせてくれますが、皆さんアットホームなもてなしやワインのおいしさを興奮気味に伝えてくれます(笑)

――そんな魅力的なスロヴェニアワインの注目生産者を教えてください。

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及川博登
プリモルスカ地方ブルダのKABAJ(カバイ)です。少し前にフリウリとスロヴェニアの研修で訪問してきました。昔ながらの伝統的な古き良き考えを軸に、現代の新しい自分なりの個性を吹き込んでいる。そこに惚れました!
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大野みさき
私からは2人の生産者、ロヤッツとグンツをご紹介します。1人目のROJAC(ロヤッツ)は、アドリア海のコペル港に近いイゾラで赤ワインを生産してるんですが、「スロヴェニアで一番おいしい赤ワインを造る」と自負しています。

――イゾラは赤ワインの産地なんですか?

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大野みさき
スロヴェニアの赤ワインの40%がイゾラで産出されます。他のリージョンと比べて地中海に面していて、気候がマイルドなので、おいしい赤ワインが期待できます。

ーー造り方で工夫している面もあるんですか?

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大野みさき
はい。ブドウを遅摘みして、醸造中に樽で熟成している間も目減り分の充填せず、3、4年寝かせて凝縮感のある赤ワインを造っています。私は、“スロヴェニアのアマローネ”と呼んでいます。「レネロ2015」がそのキュベです。

――2人目のグンツはいかがですか?

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大野みさき
GÖNC(グンツ)は、ポドラウイエのマリボル近郊の生産者です。彼自身、とてもファンキーでワインも躍動感のある味。ラベルにもその世界観が表れていて、楽器のモチーフや水玉模様がスパークしています。前回、輸入したときは一瞬でなくなってしまったんですが、5月末に「ハーベストムーン2017」というオレンジワインのマグナムボトルが入荷する予定です。

――最後に、スロヴェニアワインの楽しみ方を教えてください。

© 2020 Slovenian Tourist Board.
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大野みさき
スロヴェニアワインは私たちが普段食べているような家庭料理と相性がいいです。来日した生産者も自分たちが食べている食事と似ているといいます。
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及川博登
スロヴェニアの辺りでは、シーフードも食べますし、コロッケのような料理もあります。日本の食卓の料理に通じる素朴で穏やかな味付けの料理が多いので、そう感じるのかもしれません。もちろん、本格的な郷土料理と合わせたいときは、NODOに来てください!
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大野みさき
寒い日には、オレンジワインのぬる燗がおすすめです。日本酒のようにそのまま40〜45℃に温めてみてください。フリウリでそのような飲み方をする生産者もいると噂で聞きました。

――夏に向けては、どうでしょうか?

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大野みさき
濃いオレンジワインは秋冬向けですが、それ以外でも軽めのすっきりとしたスパークリングワインや白ワインもあります。なんせ白ワインの国ですからね!

ーーありがとうございました。

365wine

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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