横浜・高田のイタリアンワインバー「狸の洞窟」を訪問!

横浜にあるイタリアンワインバー「狸の洞窟」へ行ってきました。訪れたのが、ご主人の誕生月だったため、特別メニューを楽しみました。

こちらのお店は、1996年7月に開店したイタリアンワインバーの草分け。店主の坂田肇氏は、1980年代からイタリアの300以上のワイナリーを訪ねた経験を持つ、日本におけるイタリアワインの第一人者。イタリアで発足した活動団体「スローフード」の日本最古参の会員でもあります。

坂田氏はこうした活動経験をいかし、ソムリエや学生、一般の愛好家に向けてイタリアの食文化やワインセミナーの講師を務められました。私も約10年前に横浜の「イル・カーリチェ」で、セミナーを受けた一人。私にとっては、“坂田先生”と呼ぶのが自然なので、今回もそう記します。

目次

手土産の購入先で馬車に遭遇!

狸の洞窟へは、久しぶりの訪問でした。最近は土日のみの営業で、席数がそもそも7席なのに、さらに4席に減らされているので、電話予約をしておきました。電話には、坂田先生の奥様のはるみさんが出られ、「3月は主人の誕生日もあって、特別セットがある」と教えてもらいました。

当日は、坂田先生のお誕生月だというので、ウェスティンホテル東京で手土産を買っていくことにしました。敷地内の車寄せをエントランスに向かって歩いていくと、馬車が止まっているではありませんか! 何事だろうとは思いましたが、まずはウェスティンデリへ行き、手土産の購入を済ませました。

エントランスホールへ出たら、婚礼が終わったばかりのようで参列者が正面入口に向かっていました。そう、あの馬車は新郎新婦を乗せるために迎えにきたのでしょう。せっかくなので少し待っていると、幸せを誓い合ったばかりの新婚2人が登場。颯爽と馬車に乗り、こちらへ向かって手を振ってくれました。
思わずこちらも手を振り返します。どこまで雰囲気が伝わるかわかりませんが、突然ロイヤルウエディングに立ち会ったような、思いがけない光景でした。

幸せな2人を乗せた馬車はそのまま通りへ出て、2人だけのハネムーン散歩といったところでしょうか。ウェスティンの向かいにジョエル・ロブションがあるので、お城に帰るみたいでロマンチックです。幸せを分けてもらったかのような時間でしたが、この後は横浜に向かって急ぎました。日吉駅から横浜市営地下鉄グリーンラインに乗って高田駅へ向かいます。

狸の洞窟に到着!

狸の洞窟に到着しました。高田駅からは徒歩すぐ。1分もかからないかもしれません。一見、住宅のようですがこちらが入口。信楽焼の狸が仲良く並んでいるのが目印です。

カウンターの向こうで出迎えていただいたのが、坂田先生とはるみさん。通称、TASSOと狸妻のおふたりです。久しぶりでしたが、店内の雰囲気は変わりません。この日は、2人1組の先客がありました。先生たちの後ろに沢山のグラッパが並んでいるのに注目。すごい数ですよね。

そして逆側のカウンターの客席の背後には、貴重なワインの空き瓶もあります。なにしろワインは250種類、グラッパは150種類あるそうです。この日は告げられていたように特別メニューがあるので、それを注文しました。

先に届いたコペルト。日本でいうお通しですね。カウンターにオリーブオイルがあるので、それをかけていただきます。このオリーブオイルもイタリアのもので、風味があっておいしいんです。

このときだけの特別メニューはグラス3種セット(6,000円・コペルト付き)でした。

ウマニ・ロンキの白ワインは樹齢80年?

まずは、左の白ワイン【“ヴェッキエ・ヴィーニェ” ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ・クラッシコ・スペリオーレ】からいただきます。

こちらは、ウマニ・ロンキという生産者のヴェルデッキオの古木のブドウから造られたワインです。ワイナリーのホームページを確認すると、ウマニロンキはマルケ州とアブルツォ州に畑を持つワイナリーで、1957年から始まる歴史では古木を大事にしながら、ヴェルデッキオとモンテプルチアーノからワインを造っているとのこと。この白ワインは、樹齢30年の古木のブドウから造られていますが、坂田先生によると、樹齢60年から80年の木もあるのではということでした。

いただいてみると、さすがに古木だなと思わせる、果実の凝縮感がある力強い味わい。イタリアワインらしいしっかりした酸があり、苦味やミネラル感も表現され、高いバランスが保たれたワインでした。このミネラル感は、アドリア海沿いの断崖絶壁の場所に畑があるからではないかということでした。潮風による海のミネラルですね。

ウマニ・ロンキについて、坂田先生に話を聞いてみると、ちょうどカウンターにウマニ・ロンキのミケーレ・ベルネッティ氏との写真が飾られていました。こちらは、2012年度版のイタリアグルメガイド『ガンベロ・ロッソ』誌で、カサル・ディ・セッラ・ヴェッキエ・ヴィーニェが「白ワイン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた後に来日されたときのもの。

イタリアの数多あるワインの中から、最高峰の白ワインに選ばれたこともあるんですね。しかし、ウマニ・ロンキは高級ワインを追求するだけのワイナリーではないそう。例えば、こちらのワインに見覚えがある方も多いのではないでしょうか?

そう、魚型の透明ボトルに入ったワイン。カジュアルなレストランには必ずと言っていいほど置いてある、リーズナブルなワインです。見た目のキャッチーさもあって、世界的に成功したワインの1つ。坂田先生にいわせると、ウマニ・ロンキにはビジネスセンスがあると。こうしたアイデアで得た資金を投入して、古木を維持するなど、やりたかった畑づくりや設備投資ができるのなら、本当に素晴らしいこと。ストイックにワイン造りを追求する生産者には頭が下がりますが、ビジネスセンスでワイナリーの規模や品質を上げる努力をするのも同じくらい尊敬すべきことです。

バルバレスコとブルネッロを飲み比べ!

次は、右の赤ワイン2種類をいただきましょう。
中/ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2013 カステッロ・バンフィ
右/バルバレスコ・リゼルヴァ1999 ロベルト・サロット

ブルネッロとバルバレスコなので、サンジョベーゼとネッビオーロですね。飲み比べてみると、バルバレスコの方が柔らかさがあって、甘みすら感じるほど。一方のブルネッロは苦味があって、がっしりしていました。

これって品種からすると、逆のイメージがありました。坂田先生に解説をお願いすると、ロベルト・サロットは大樽で仕上げる古典派の造り手で、時間を経て熟成した柔らかみが出ているのではないかということでした。バンフィのブルネロの方は、サンジョベーゼの中でもサンジョベーゼ・グロッソという果皮が厚いクローンのため、なじむのに時間がかかってがんこなのだとか。バンフィの畑は標高200mくらいだと思うけれど、一般にブルネッロは標高450mくらいの畑もあり、バンフィの畑は西南斜面で西陽の当たる時間が長く、その傾向が色濃くなるそう。

ただ、2つはどちらも素晴らしいワインで、かつちょっと似た感じにも思えました。それについて、坂田先生に聞いてみると、「ワインは熟成すると似てくるからね」との深いお言葉。たしかにそうなのかもしれません!ワインをいただいている合間に、おつまみもいただきました。サラミやチーズの盛り合わせは1000円くらいだったと思います。この日は、緊急事態宣言中で閉店時間も早かったので、食事はあまり頼みませんでしたが、メニューにははるみさん特製の豚肉や鶏肉のグリル料理やパスタ料理もあります。常連さんに隠れた人気メニューが、ラーメンなのだとか。

また、今回は特別メニューだったのですが、通常のグラスワインはボトル1/4の量が出てきます。普通は1/6とか1/8なので、だいぶ多い! ゆっくりとワインの変化が楽しめます。

坂田先生から聞いた、こぼれ話

先ほどの赤ワインをいただいているときに聞いた話でインパクトがあったのが、イタリアの大樽の話。大樽は2000〜3000ℓくらいのイメージがったので、ロベルト・サロットが4000ℓだと聞いて「大きいですね」と言ったんです。すると坂田先生が「4000ℓなんて大きいうちに入らない。イタリアには1万2000ℓの大樽もある」のだそう。なんと、2階建くらいの高さがあるそうです。そうなると、もう住まいですよね。モンゴルのゲルみたいな感じなんでしょうか?

狸の洞窟名物とでもいうべき、石コレクション。石に土壌の様子が刻まれるとのことで、「ブドウ畑の構成は石でわかる」とまたまた名言が出ました。石にはシールで地名が書かれています。石を観察しながら、そのワインを飲むというツウな飲み方なんていかがでしょうか。

カウンターの客席の後ろには、古いヴィンテージの空きボトルが飾られています。少し小さな瓶は、720mlボトル。その昔、まだあまりイタリアからワインが輸出されていなかった時代のワインボトルには、そういう小さな規格のものもあったそうです。

緊急事態宣言下でもあったので、あっというまに閉店時間になってしまいました。でも、もうすこし延長戦。

ワインショップ「ジョコンド・チョコサン」を訪問

狸の洞窟の後は、2Fにあるワインショップ「ジョコンド・チョコサン」へ。実は、はるみさんが酒販免許をとって、ワインショップを開業されたんです。

ワインショップ「ジョコンド・チョコサン」の店内です。見ての通り、そんなに広くはありませんが、300本のワインがあるのだとか。ワイン以外に、特別に育てられた卵もあります!

棚にもワインがぎっしりと詰まっています。

おすすめだというオレンジワイン。2つはヴィンテージ違いですが、色が結構違いました。これは醸し期間や熟成期間の違いではなく、その年のブドウの熟度の違いなんだそう。たしかにヴィンテージが若い方が色が濃かったです。面白いですね。ぜひ、またワインショップの取材でも訪れたいと思います。

今回は、坂田先生の狸の洞窟を訪れました。東京や横浜の中心部でもない場所ですが、足を伸ばした先では、イタリアワインの世界の奥深い世界にトリップできるような時間が過ごせます。ぜひ、予約してお出かけしてみてはいかがでしょうか?

狸の洞窟
横浜市港北区高田東3-2-8 1F
16:00〜21:00/月〜金定休
045-877-7308
http:ufficio-sakata.net

ジョコンド・チョコサン
横浜市港北区高田東3-2-8 2F
13:00〜20:00/月・火定休

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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