「横浜“TSUTAERU”WINE FES.」で自然派ワインの熱気を満喫!

横浜“TSUTAERU”WINE FES.に参加してきました。こちらのイベントは、日本ワインの造り手や自然派のインポーターのワインをフリーフローで楽しめ、彼らが登壇者となって自らのワインストーリーを「伝える」もの。横浜の自然派ワインの波はまだ始まったばかり。鯖寅酒販さんがこれを盛り上げようと、開催されました。ワインを飲みながら造り手やインポーターの思いが聞ける夢の3時間イベント。どんな内容になるのでしょうか?!

目次

入手困難なレアワインも飲み放題!

13時のスタートと同時に受付をすませると、ワイングラスが配布されて自由にフリーフロー。14時から「伝える」トーク、15時から再びフリーフローというプログラムです。

会場にはワインブースが6つ、飲食ブースが3つあります。

フランスの自然派ワイン輸入元「サンフォニー」の竹下正樹さん。ローヌやボージョレのワインが並びます! 最初の1杯として、ロゼスパークリングをいただきました。

新潟ワインコーストから、自然のままの日本を表現したワインを造る「ドメーヌ・ショオ」の小林英雄さん。夫婦ふたりで、年間500ケースを造る小さなワイナリーで、年間16本しか造っていないワインもあるとか。「風薫る」は雑草もからずに自然のままに育ったブドウのうち、きれいなものを選抜して、そのまま放置して造っている超自然派! 「If I’m gone please don’t be sad 」は、かつお昆布だしに梅酢やしそが香るワイン。日本人が素直に心地よく味わえるワインでした。小林さん曰く「好きすぎて売りたくないくらい」(!)。手塩にかけたワインだけに、好きな人に飲んでもらいたい気持ちが伝わってきますね。

イタリアとスロヴェニア、ジョージアのワインを輸入している「ノンナ アンド シディ」の岡崎玲子さん。注目のジョージアワインが大人気でした。

横浜駅エリアの平沼橋にある中華料理店「タンメン カントナ」。中華のおつまみと自然派ワインを楽しめるお店です。当日は、中華風のポテトサラダを販売。アイスクリーム用のコーンに乗せて、片手でも食べやすいようにアレンジされていました。「写真を撮らせてください」とお願いしたら、「本気出していいですか?」とメガネをかけてくれました!

宮城県川崎町のワイナリー「ファットリア アルフィオーレ」の坂口礼奈さん。かわいいNECOシリーズのワインが一度に楽しめるのは貴重!

川崎の自然派ビストロ「kitchen maroyaka waltz」も出店されていました。ボリュームあるパテ・ド・カンパーニュが600円でした。

三重県からイタリアワインのインポーター「37 ワインセレクションズ」の坂口幸伸さん。うずまき模様で有名なコスタディラのラベルに「ぐるぐる」と書いたのは坂口さんのアイデア。ラベルの渦巻き模様を見て「ぐるぐるワイン」呼ばれていたので、日本向けに印刷してもらったそう。

大阪から来られたスロヴェニア専門インポーター「365ワイン」の大野みさきさん。オレンジワインをデキャンタして色をわかりやすくしたり、「ぬる燗にできる」といったアプローチでブースを作り、目を引いていました。

茨城県石岡市からは、イタリア式石窯パン「パネッツァ」も出店。パンの盛り合わせが販売されていました。

「伝える」トークでワインへの熱い思いをプレゼン

14時になると、いよいよメインイベントである“TSUTAERU”トークが始まりました。トップバッターは、ドメーヌ・ショオの小林英雄さん。

小林さんは、ワイン造りをとおして実現させたいことをトーク。
「僕はドバイで育ちました。そのほかにもいろんな国に行って、アフリカも好きです。湾岸戦争に巻き込まれた国で育ったこともあって戦争が大嫌いで、歴史を勉強すればするほど差別が嫌いです。昔から日本が一番かっこいい国だと思っていました。うちのワインは、“違う”と言われることがあるけど、ヨーロッパを模倣する意味がわからない。驚くほど人間が保守的なのって、実は食文化。ワインなんて勉強すればするほど、固定概念があって、“こんなのシャルドネじゃない”、と言う人もいます。

でも、ほっとけよと思う。うちの畑は除草剤もまかないし、草もとらない。生き残ったブドウだけで酵母も入れずに醸造しています。それって何かというと、僕がアガる。すごく楽しいんです。それをおもしろいと思うお客さんがいて、それが楽しくてやっています。僕が言いたいのは、とにかく幸せになろうぜってこと。ワイン造るのが楽しいくて、飲んだらもっと幸せ。みなさんを笑顔にしたいと思います」と、意思表明のようなトークを展開。自分の好きな日本の風土を丸ごと味わえるワインで、みんなを幸せにしたいという思いが小林さんのワインには詰まっているんだな、と感じました。

2番手は、ノンナ アンド シディの岡崎玲子さん。ジョージアワインの造り手について、語ってくれました。(岡崎さんの隣は、今回のイベントを企画したアトリエオッペの萩原さん。司会を担当されていました)

「ジョージアの造り手は、こういうのが造りたいと思うとそれに向かって真剣に自然に向き合います。私はそういう人が大好き。共通してみんないい人なんです。本当ならもっと儲かる仕事ができるのに、辞めてワインにのめり込んだ人たち。足し算しない引き算のワインを造っています。
私はワインの輸入に当たって造り手は自分で探したことはなくて、人の紹介が全部。みんないい人だから教えてくれるんです。私は英語も3つしか喋れません。”I love you.”、”Could you tell me?”、”I want to buy.”だけ。ジョージアの人は間違いなく素晴らしいです。この機会に、真剣で綺麗な心を持っている人たちのワインを味わっていただけたら、と思います」と、ジョージアワインの魅力を人にからめて教えてくれました。

次は、37ワインセレクションズの坂口幸伸さん。三重県で一人インポーターの仕事をしているため、こうしたイベントに登場するのは珍しいそう。

「普段はワイン倉庫の番人のような仕事をしています。せっかく普段飲めないワインがたくさんあるので、飲んで行ってください。私にとって造り手は、友達・・ではないんですけど、あまり堅苦しいのはありません。うちが小さいので、付き合う蔵元も小さいところがほとんど。だからお友達。その延長線上でレストランとも仕事してます。気軽な感じて楽しくぼちぼちやってます。もし、イタリアに行く機会があれば、鯖寅さんをとおしてアレンジさせていただきます」と、イタリアの生産者とアットホームに付き合っていることを伝えてくれた。

4番目の登場は、365ワインの大野みさきさん。ワインとの出会いからこれまでを振り返るワインストーリーを語ってくれました。

「ワインと出会ったのは、26歳の頃。当時は、航空会社のCAでした。海外のフライトでワインが買えて、休暇では旅行にいけて天職だと思っていました。でも、30歳を目前に“私の人生このままでいいのか”と思ったとき、ワインの勉強をもっとしたいと思ったんです。それから会社を辞めてフランスで1年間ワインの勉強に行きました。その頃にスロヴェニアのワインに出会って、インポーターとしてビジネスすることに決めました。

いま、インポーターの仕事を一人でやっていると、”大変だね”、”休みないでしょ”と気の毒に思われていますが、そんなことは全くありません。これは私にしかできないこと、たくさんの人を笑顔にできる仕事です。私の伝えたいことは、好きなことやりたいことをやるのが大事ということ。人生一度きりなんだから自分が納得することをやっていただけたらと思います」と、自らの生きざまを例にあげて、伝えたいことを教えてくれました。

5番目は、ファットリア アルフィオーレの坂口礼奈さん。まずは、ともに働く目黒浩敬さんとの結婚を報告。祝福ムードに包まれながら、ワインを造るまでの道のりを話し始めてくれました。

「私はここ横浜出身です。大学を卒業してから東京の設計事務所で働いていましたが、自然が好きで、移住や食、農業に興味がありました。結果として、2016年に宮城県に移住しましたが、そのきっかけが夫である目黒浩敬でした。彼は仙台で10年間イタリアンレストランをやっていた料理人でしたが、2014年にレストランを閉めてワイン造りをすると決めて、川崎町にぶどうを植樹しました。私は、2016年に彼が思い描くビジョンに衝撃を受けて、彼を応援したい気持ちで手伝い始めたんです。

私はワインを造りたくてこの業界に入ったわけじゃないんですが、地域、農業食べることが楽しみであり、豊かな気持ちになったりするのが必要不可欠だと思いました。食べるもの何でもいいやと貧しくなっていくことや、地域の過疎化も心配でした。本質的な豊かさを知る人が少なくなっている現状でどうやったらそれを伝えられるんだろうと思っています。

ワインの仕込みは1年のうちでも3ヶ月ほど。そのときは戦闘モードですが、残りの数ヶ月はブドウのお世話をするのんびりとした日常です。その時間で何をどう伝えられるんだろうということが楽しみで、何をやっているかというと、地域で頑張っている人を応援しています。ワイナリーを立ち上げるときには、川崎町で作られた和紙をラベルにさせてもらったり、地元の大工さんに建物を作ってもらったりしました。2014年にブドウを植えてから川崎町でもブドウをやりたいという人も出てきて、それは嬉しくて。4年間積み上げてきたものが種を落として芽が出てきているのかなと思います」と、ワイナリーの地域での取り組みを発表してくれました。

トリは、サンフォニーの竹下正樹さん。30年ワインの仕事をしているベテランの登場です。

「大学卒業後、レミーマルタンを売る仕事をしていましたが、辞めてフランスに渡ってワインの勉強をしました。3年で300軒くらいの蔵元を巡って気づいたことが、造り手の人間性がワインにでる。明るい人が造ると明るいワインになって、真面目な人が造ると真面目なワインになる。帰国後は日本が赤ワインブームでした。心臓病にいいとか言われましたが、飲んだ翌日ダメージはきます。

そんなときに1つの出会いがあって、エノコネクションの伊藤與志男という男。ナチュールを日本に紹介する仕事をしていました。そこで働いていろんな生産者との出会いがあって、勉強会で最初に感銘を受けたのがニコラ・ジョリー。宇宙のエネルギーのワインの中に入っているというんです。フィリップ・パカレは、ワインの発酵自体がエネルギーだとも。ほかにもいろいろな人の話を聞いてワイン造りの奥深さを知って、たかがワインされどワイン。ワインの中にいろんなメッセージが入っていると感じました。ワインはエネルギー飲料。昨日も飲みましたけど、今日も元気です。こういうおいしいワインを飲んで楽しくなりましょう」と、生産者の考えや生き方をまじえて自然派ワインの素晴らしさを伝えてくれました。

トークが終わると、鯖寅酒販の藍葉さんからは、今日試飲してもらったワインが買えるというアナウンスが。そして再び、フリーフローが再開されました。

伝えたい思いを聞いたあとは、登壇者の皆さんとの会話もより突っ込んだものに。トークを聞いて、会場が一体になった感覚もあって、参加者同士の交流も進み、最後まで話に花が咲いていました。今回のイベント会場は、関内駅前にあるリストビルという大きなビルのワンフロアを貸し切りにしたもの。参加者は100人以上いたのではないでしょうか。帰る人もほとんどいなくて、3時間たっぷりと満喫した人が多かったと思います。自然なワイン造りをしたい、それを広めたいと思う人のトークを聞くという試みは、横浜に集まるワイン好きの心に残るものになったに違いありません。今後もますます、横浜のワイン熱が高まっていくのでは、と感じさせました!

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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