イル・カーリチェ(関内・馬車道)

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イタリアワインの玄関口

イル・カーリチェは、“外国文化の玄関口”といわれる横浜・馬車道にある。異国文化を連れてきた地に2004年に開店して以来、専門店としてイタリアワインの入口の役目を果たしている。蔦の絡む一軒家の扉を開けると、イタリアの鮮やかな食文化を映し出した食材とともにワインが並ぶ。テイスティング用のワインも毎日、用意されているから、まずはここで一杯。ワイン樽が2つ置かれたカウンターがイタリアらしい気取らなさ。グラスでワインを味わいながら店内を見渡すと、数種類のチーズやハム、お菓子、個性的なラベルのワインが目にも楽しい。初めて足を踏み入れても、その人懐っこいイタリア流のおもてなしで、自然とイタリアの食文化に親しませてくれる雰囲気があるのだ。

普段からイタリアワインを嗜む人には、2階へ上がるのがおすすめ。図書館のように並んだ棚には、ぎっしりとワインが埋められ、圧倒されるほど。イタリアワイン愛好者には、“聖地”とも呼ばれている。よく見ると、イタリア20州すべてのワインが北から南まで並べられいる。そのなかには、ヴァレ・ダ・オスタ州やモリーゼ州などイタリアワイン専門店でもあまり見かけないワインもちゃんとある。イタリアワインを深く知ると、ピエモンテやトスカーナの名産地だけでなく、小さな村のワインや島のワインが気になってくる。専門書でしか見たことのなかったワインが並ぶ品揃えを前にして、1時間は降りてこない強者もいるほど。イタリアワインの楽しさから奥深さまでが、ぎっしり詰まったお店となっている。

イタリアワインの素朴な良さを知ってほしい

イル・カーリチェは2004年の開店以来、長年に渡って「イタリアワインとチーズの専門店」を掲げ、豊富な品揃えとともにイタリアワインと食文化を発信してきた。
グループの1号店は、2002年に開店したイタリア料理店「ヴィノテカ サクラ」。その2年後、この地の日常にイタリアの息吹を伝えようと、ワインショップのイル・カーリチェが誕生した。
オープン間もない当時は、まだまだ日本にワイン文化が浸透しきれていない時期。イタリアワインのバラエティの豊かさが難しさにつながり、苦戦が続いたこともあったそう。しかし、テイスティングやイタリアワインセミナー、生産者の来日イベントなど工夫を凝らした営業を続けるうち、近隣に住む人を常連として獲得。現在は、昼間も常連のお客様がふらりとテイスティングに訪れるほど愛される店になっている。15周年を迎えた2019年は、常連を招いてパーティーが催された。また、その間に卸売りの「ボン ディコッレッツィオーネ」、バールの「クラッ」も開業。近隣にもイタリアンレストランがたくさんでき、馬車道のイタリア食文化の起点ともいえるワインショップとなっている。

2015 年から勤務し、店長を務めるのは、森淳平さん。ワインを扱ってきたキャリアは約15年。かつてフランスを中心とした世界各国のワインが揃うワインショップで働いてきた経験もあり、フランスワインやチリワインを例に出しながら、イタリアワインの良さを紹介するのが得意。実際、世界のワインを知る立場にいると、イタリアワインの良さがよくわかると言う。

「ワインはフランスから入られる人が多いと思いますが、イタリアはフランスとは違う着地点でワインが造られています。フランスワインが目指すのは、洗練されたエレガントさ。ですが、イタリアワインはいつもそばにあって仲間と飲むもの。飾りっ気のない素朴さがあるのが、ほかにない魅力。僕らにしてみると、多様性があるので、好みに合わせておもしろい提案ができます」

ほかのスタッフも、皆イタリアの食文化を愛する親しみやすい笑顔を持っている。たくさんの種類の中から、ワインの個性を見抜いた1本をセレクトしてくれるお店となっている。

2000種類以上を誇るイタリアワインの品揃え

イル・カーリチェのイタリアワインの品揃えは2000種類を超え、日本一ともいわれている。その理由は、グループの卸売り部門「ボン ディコッレッツィオーネ」と在庫を共有しているから。20州すべてでワインが生産されているイタリア各地のワインが揃うバラエティ豊かな品揃えになっている。その品揃えには、イタリアから訪れた生産者も舌を巻くほど。なぜなら、現地のワインショップは地元のワインが置かれることが多く、全土のワインが揃う店はほとんど存在しないから。来日したときに、その品揃えを褒めながらうれしそうに購入していく生産者もいるという。

ワインのタイプでいえば、注目の新しい生産者も扱われているが、古くからの生産者のラインナップが厚い。特にバローロやバルバレスコといった伝統産地の優良畑は、老舗ワイナリーが所有しているものが多く、地域での評判も高い。こうしたワインをインポーターとの継続的な仕入れで培った信頼関係のもとで扱われている。

よく売れるボリュームゾーンは、2500〜3000円台だが、1Fにはデイリーワインも充実。ワイン愛好家はもちろん、初心者でもお客様目線の接客が心掛けられている。

「ワインショップの上から目線が苦手という話を聞いたことがあります。そうではなく当店は、ワインのハードルをなるべく下げる店でありたいと思っています。イタリアには、ランブルスコのようなフルーティーでシュワシュワっとしたワインもある。そういう親やすいワインがあることからご紹介したいと思っています」

店内のレイアウトをチェック


1Fは、デイリーワインや季節のおすすめワイン、食品が並ぶ、普段使いのゾーン。種類豊富なパスタや色とりどりのお菓子が並ぶコーナーもあるため、ワインをテイスティングしながら、スタッフに夕食のワインやおうちワインを相談するのにうってつけ。2Fは、州ごとのワインや高級ワインが並ぶ、特別な日のエリア。記念日やプレゼント、ワイン会などに持っていくワインを探すのにぴったりだ。

レジ下のショーケースには、種類豊富なチーズと生ハムが陳列されている。100g〜切りたてを持ち帰ることができる。

季節に合わせておすすめがピックアップされて紹介されている。

オリーブオイルやパスタなどのイタリア食材も豊富。

イタリア製のチョコレートやジャンドゥーヤは子ども連れに大人気。12月には、伝統菓子パネットーネも並ぶ。

階段の途中には、南イタリアの豊かな食文化がわかるカラフルな絵皿もある。

2Fの奥には、時を重ねた貴重なヴィンテージワインもある。

最近、シチリア島のワインも指名買いが多いとか。もちろん、たくさん用意されている。

フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のオレンジワインもずらり。

おすすめは伝統的バローロ生産者のワイン

「バルベーラ・ダルバ・スーペリオーレ2018」オッデーロ ¥4,000

おすすめとして紹介してもらったのは、バローロ最古の生産者「オッデーロ」のワイン。

「オッデーロは、バローロ最古の生産者として、超一級畑をしっかり所有しているワイナリーです。1990年代には実験的なことをやり始めて迷走していたこともありましたが、近年息⼦のピエトロが醸造担当になり、古き良き往年のオッデーロを復活させました。

オッデーロのバローロは繊細で厳格なニュアンスもありつつ、間口が広い。伝統的生産者でありながらキャッチーさもあるのが特徴です。バルベーラ・ダルバ・スーペリオーレは、その入門編としておすすめ。バルベーラという品種は、酸が高いイメージがありますが、こちらはオーク樽で熟成したニュアンスもあいまってリコリスのような甘やかな果実感もある。初心者でも楽しめる1本です」

ピエモンテ伝統ワインの入口として、チェックしておきたい。

イベントはホームページをチェック

イル・カーリチェでは、ノヴェッロ(新酒)や比較試飲などのイベントも実施されている。以前は、生産者の来日イベントが頻繁で、秋頃には毎週のようにオーナーや醸造家が訪れていたほど、にぎやかなイベントが名物だ。スケジュールはホームページやSNSで更新されているので、チェックしてみよう。

イル・カーリチェ
横浜市中区住吉町4丁目46
045-227-5373
12:00〜21:00/無休
HP:https://www.il-calice.jp
Facebook:@IlCalice

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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