パリ・グランメゾンのソムリエが旬ワインをセレクト
「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京」は、日本のあらゆるワインショップの品揃えとは一線を画す。棚に並ぶワインを目利きしているのは、パリの老舗グランメゾン「タイユヴァン」のソムリエチーム。パリ郊外にあるタイユヴァン専用のワインカーヴから、彼らが選んだものが東京へ直送されているのだ。
彼らはフランス全土を渡り歩いて生産者を訪ね、畑の様子を見たり、樽から試飲して、ワインリストに載せるべき1本を発掘している。品質に厳しい眼差しを向けることで知られているため、生産者にとって彼らに認められることは1つの名誉。市場への影響も大きく、実際にスター生産者を多く輩出している。長熟シャブリの生みの親として知られる名手フランソワ・ラヴノーもタイユヴァンに見出され、世界にその名を轟かせたひとりだ。
そのため、フランスのワイン誌の最新号に載っているような注目の生産者のワインが届くことも珍しくない。フランスの”いま”、ひいては次なる世界のトレンドがタイムリーにわかるワインショップ。パリと東京の情報時差をなくしてくれる存在なのだ。
ワインの“旬”には、もう1つの意味がある。前述のとおり、タイユヴァンはパリ郊外のセーヌ川沿いに専用ワインカーヴを所有している。ワインカーヴは、山を切り開いて造られた地下洞窟。温度が一定で光や熱を遮断できるだけでなく、湿度が十分にあり、ワインを熟成するにはこれ以上ない環境となっている。ここに30万本ものワインが貯蔵され、ソムリエチームは月に何度か訪れてテイスティングして、最適な飲み頃と判断したものだけをセレクト。そのまま東京へ送られてくるのだ。そのため、店内に10年前、20年前のヴィンテージワインがあれば、それは飲み頃ワインの証。フランスの新星ドメーヌのワインや飲み頃のグランヴァンが、日本にいながらにして入手できるワインショップとなっている。
老舗グランメゾンの哲学を受け継ぐワインショップ
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京は、「タイユヴァン」が手がける世界で3店舗目のワインショップにあたる。1946年に創立されたタイユヴァンは、世界屈指のグランメゾン。「L’accord Mets & Vins(食とワインとの調和)」を哲学とし、ワインと食事が織りなす繊細で優美な味わいを提供してきた。パリに暮らす著名人にとっては上流階級の社交場であり、その世界にふれることはステイタス。クリスチャン・ディオールやアラン・ドロン、サルバトール・ダリなど各界を代表する華やかな顔ぶれが訪れたことでも知られている。
美食の権威「ミシュランガイド」でも長らく三つ星を維持してきた。高く評価された点の1つが、秀逸なワインリストにある。1987年には、その哲学を受け継ぐワインショップとして「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン」をパリに開業。2013年には「中東のパリ」といわれるレバノンのベイルートに2店舗目を展開。そして、2018年9月に3店舗目としてオープンしたのが東京だ。
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京では、食とワインとの調和を重視し、世界の店舗で初めてカフェスペースが併設された。メニューには、ワインとのペアリングセットやランチセットのほか、フランス各地の伝統料理やシャルキュトリ、チーズ、デザートも用意。食事もタイユヴァンによる監修で、本場のエスプリと世界観をそのまま伝えている。
エノテカとのパートナーシップでワインを紹介
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京のワインの輸入やショップ運営を担っているのはエノテカ。店頭には、ヨーロッパ事情やフランスワインに精通したエノテカスタッフが選抜されている。
スタッフの萩原克彦さんもその1人。彼は、2010年にエノテカに入社後、広尾本店や銀座店などで勤務。その後、2015年からルクセンブルクのワイン販売輸入会社に入社。店頭販売だけでなく、買い付け動向やイベントでのワインサービス、レストランでのソムリエ業務を経験した。2016年9月には南フランスのユニバーシティ・デュ・ヴァンでフランス政府公認ソムリエ「ソムリエ-コンセイエ,カヴィスト」を取得。ワインの本場・ヨーロッパで武者修行してきた。
そして、帰国後は再びエノテカに入社し、2018年からはレ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京に勤務している。話を聞くと、ヨーロッパのワイン事情を知ったうえで、ワインを紹介するやりがいを感じているという。
「エノテカでは、シャトー・ラトゥールやサッシカイア、ガヤなど各地を代表するトップドメーヌを扱ってきました。一方、ルクセンブルクでは、規模は小さいけれど地元の人に愛される蔵元を扱いました。現在の店舗では、フランス各地の注目ワイナリーを扱っているので、ヨーロッパでの経験が活かせています。
そもそも日本人とフランス人では食習慣や生活習慣の違いから、味覚に関しても酸味1つ取っても捉え方が違う。ですから、パリのソムリエチームが選んだワインを日本人のお客様が理解できるような表現に変えてご紹介するのが私たちの務め。食とワインとの調和を考えた、日本の食卓にあうワインをご提案しています」と萩原さん。
パリと東京の最強タッグが、私たちに新しいワインの魅力を食とともに伝えてくれる。
フランス各産地のワインを品揃え
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京では、約1000種類、約4000本ものワインが揃えられている。そのほとんどはフランスワイン。日本でもメジャーなボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュはもちろんのこと、それ以外の産地の充実ぶりも特筆すべきものがある。写真を見てもらうとわかるとおり、アルザス、ロワール、ローヌ、ラングドック・ルーション、南西地方、プロヴァンス、コルスと各産地のワインがきれいに並ぶ。例えば、ロワール地方1つとっても50種類はあるという。すべてのワインは、産地やワイナリーの伝統ではなく、品質だけを基準に選ばれている。
世界のレ・カーヴ・ド・タイユヴァンのみで入手できる「コレクション・タイユヴァン」も押さえたいワインシリーズ。こちらは、フランスにある40地域のトップワイナリーがタイユヴァンのために瓶詰めしたワイン。樽熟成の段階でソムリエチームがテイスティングし、最も優れた樽のワインが指定されている。ギフトでも人気が高いシリーズだという。
そのほか、エノテカが扱う各国のトップドメーヌのワインも品揃え。日本では珍しいフランス各地のワインから熟成したヴィンテージワイン、世界のグランヴァンまで、行きとどいた品揃えとなっている。
店内のレイアウトをチェック
入口付近にワイン棚があり、ずらりとワインが並ぶ。入ってすぐのおすすめワイン以外は地方ごとに分かれているので、お目当の地域があれば、探してみよう。熟成グランヴァンが並ぶワインセラーは中央。カフェコーナーは、入って左側にある。
ワインセラーの中では、飲み頃の熟成ワインが出番を待っている。
飲み頃となった2010年代前半のブルゴーニュの品揃えが充実。ブルゴーニュファンはぜひ一度足を運んでほしい。
カフェスペースの壁には、タイユヴァンを贔屓にしていた華やかな顔ぶれが実際に飲んだワインのボトルが展示されている。彼らのお気に入り銘柄をチェックするのも楽しい。
おすすめはフランスで注目されている旬のワイン
おすすめとして紹介してもらった2本は、いまパリが注目する旬の生産者のワイン。
「ドゥニ・ジャンドーはフランスのワイン誌に紹介された注目の若手です。ブルゴーニュのワインは、モンラッシェなど有名産地の名前で選ぶことが多いもの。こちらはプイィ・フュイッセという有名産地より南のマコンのワイン。ですが、産地の概念を外して白ワインとして飲んだときにグランヴァンに匹敵するもの。
タイユヴァンが認めるだけのセンスがあり、産地ではなく品質で注目を集めている1本。じっくり熟成させることで、飲み進めるごとに魅力が出てくるおいしさを感じます。ブルゴーニュの南側のワインは、ともするとぽてっとした印象になりがちですが、ムルソーやピュリニー・モンラッシェのような緊張感のある味わいになっています」
もう1本のおすすめワインは、南西地方の自然派スパークリングワイン。
「南西地方はブドウ栽培の歴史が長く、小規模生産のいい造り手がいます。ガイヤックのドメーヌ・プラジョルは、地元の古代品種に着目しているワイナリー。古代品種を研究し、現代に蘇らせた現当主の祖父にあたる方は、植物学の本を出版し、学会にも貢献しています。
こちらのスパークリングワインは、エコセール認証をとった自然派ワイン。日本酒でいうと濁り酒にあたるもので、旨味のつまった滋味深い味わい。アペリティフとして飲むというより、食中酒として飲んでいただきたいスパークリングワインです」
季節のメニューやイベント情報はホームページで
カフェスペースのメニューは、季節に合わせてラインナップが変更されている。特に白ワイン、赤ワインそれぞれに合わせたアミューズとのペアリングは毎回、趣向が凝らされている。タイユヴァンのペアリングとは何かを堪能できるまたとない機会だ。また、月末の週末にはフリーフローイベントなども企画されている。いずれも、ホームページで情報更新されているので、チェックしてみよう。
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京
中央区日本橋2-4-1 日本橋髙島屋S.C.本館8F
03-3548-0858
ワインショップ 10:30〜22:00
カフェ&バー 11:00〜22:00(LO 21:30)
https://www.lescavesdetaillevent-tokyo.com
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