食のまち・築地にナチュラルワインの文化を

日本最大の中央卸売市場として、長らく日本の台所を支えてきた築地。現在も、築地場外市場はそのまま残り、海産物を中心に400を超える専門店がにぎわいをみせる。2016年に開店した酒美土場は、「築地で本物の食、そしてナチュラルワインの文化をつくりたい」とのコンセプトで誕生した。築地場外市場にワインショップとは、意外な組み合わせに思えるが、実際にはまわりの専門店になじみ、まちに根付いている。築地が外国人観光客で盛り上がっていた頃は、外国人も多く訪れていたそう。現在は、店内に並んだナチュラルワインや発酵食品を求めて、築地の買い物客や家飲みワインを買い求める近所の人が早い時間から訪れる。

また、軒先のテラスには常時10種類のグラスワインが並び、角打ちできるバースペースとして営業中。まわりの店で売られている海産物を持ち込んでワインとの組み合わせを楽しんだり、出前を取ったりと、築地の食の豊かさを活かした楽しみ方もできる。そのスタイルが支持され、土曜日ともなれば、まわりの店とともに早い時間から盛り上がりをみせる。日本の食とナチュラルワインの世界に、するりと連れ出してくれるワインショップとなっている。
*ワインバーは東京都の要請により、アルコール提供を休止している場合があります。ホームページやSNSでご確認ください。

ナチュラルワインに導かれた2人がタッグ

酒美土場を運営するのは、岩井穂純さんと喜納(きな)恭平さんの2人。店を立ち上げた岩井さんは、ソムリエやインポーター、ワイン講師のキャリアをもち、ワインレストランの立ち上げやオーストリアワイン大使の実績もある。元々ブルゴーニュやオーストリアワインが好みだったそうだが、2011年にオーストリアの自然派ワイン生産者を訪れた際にその魅力に気づいたという。
「きっかけは、オーストリアのヴェルリッチの畑を訪れたことです。それまで管理された畑しか見たことがありませんでしたが、初めて生き物がたくさんいる畑を見て、その多様性や土の柔らかさを肌で感じました。だから、培養酵母ではなく自然に発酵させた方がいいし、ミネラル豊かな味にもなる。そういう一連の流れが、当たり前のこととして繋がったんです」
その後、自然派ワインを深めていくうち、日本でいち早くオレンジワインに興味を持ち、料理とのペアリングを研究。業界内で、“アンフォラおじさん”と呼ばれるまでになった。そして、自身が店に立って、ワインを楽しめる場を模索するようになり、イタリア・ヴェネト州の港町で見た「チケッティ」という漁師がふらりと訪れる立ち飲みバーをモデルに、築地でナチュラルワインを出す酒美土場を開店。現在のスタイルを作り上げてきた。
そんな思いに共鳴し、2018年から酒美土場に加わったのが、喜納恭平さん。当時は飲食店を経て、屋台を出して餃子やお酒を提供していた。そこでクラフトビールやクラフトジンに加え、ナチュラルワインも扱うなかで、酒美土場の存在を知ったという。店に通ううちに、自然と手伝うようになり、岩井さんと意気投合したことから、正式に酒美土場のスタッフとなって、魅力を伝えている。
「ナチュラルワインからワインにはまりましたが、ソムリエ試験でスタンダードなワインを知って、その良さがより明確になりました。ナチュラルワインは、その年の出来や土壌に導かれてワインができる。そういうところが自分の肌感に合うんです。のびのびと造られた、ありのままのおいしさを感じます」
2人に共通しているのは、「楽しくなければワインじゃない」との思い。難しいセオリーを抜きにして、感覚でワインを飲んでほしいという思いがある。そのため、酒美土場では身近な食と気さくなナチュラルワインで、楽しい場が作られている。築地散策に訪れたときはもちろん、銀座や新橋からふらりと足を伸ばして、自由なよろこびが詰まった場所をめざそう。

本物のナチュラルワインを届けたい

店内には、世界各国から集められたナチュラルワインが約400種類、揃えられている。基本的には、味わいを確認して喜納さんと岩井さんが本物の自然派と認めたものが並ぶ。そのなかでも、「凜としたきれいな味わい」が尊重されているので、ナチュラルワイン入門店としてもおすすめだ。
酒美土場ならではの特徴としては、オレンジワインが充実していること。メッカである北イタリアやジョージア、クロアチア、オーストリア、南アフリカなどを中心に、約80種類がセレクトされている。ワイン選びには、“アンフォラおじさん”としての岩井さんの経験と喜納さんのフィーリングが発揮されている。岩井さんはオレンジワインのペアリングを研究し、書籍も監修しているほど。築地で食材を買ったら、料理との合わせ方も教えてもらえる。
また、お客様のニーズに沿ったものというのもワイン選びで重視されている。
「コロナ期間も長くなり、家飲みに高いお金を出し続けられないというお客様は増えています。その思いに応えるため、2000円台のワインやバックインボックス、数日かけておいしく飲めるワインを提案しています」と喜納さん。築地の食材に合うワインも、家飲みワインも、任せられる品揃えとなっている。

店内のレイアウトをチェック

テラスの先の透明なのれんをくぐると、ナチュラルワインと無添加の食品がずらり。入って左手の冷蔵ケースにワインが入っているので、好みや気分に合わせて相談してみよう。発酵食品は、右奥の冷蔵ケースの中を探そう。店内には、漬物や味噌、塩こうじなどの発酵食品も並ぶ。なかには、全国の生産者から直接仕入れられているものもある。

農薬や化学肥料を使わず育てられた米を使った寺田本家の日本酒も扱いがある。

おすすめは、アロマティックなオレンジワイン

左/ジャンドン・ビアンコ2020 イルファルネート¥2,530(税込み)、右/ヌーヴェグ2019 ドメーヌ・グロス ¥3,630(税込み)

おすすめとして紹介してもらったのは、2種類のオレンジワイン。
「いずれも、アロマティック系品種を使ったフローラルな香りがするオレンジワインです。まるでライチティーやフルーツティーを味わっているような感覚で、あまりお酒が得意でない女性の方でも楽しんでいただけると思います。

左のワインは、イタリアのエミリア・ロマーニャ州の造り手のもの。年々、進化していくのを感じますが、それでいて親しみやすいワインを造っているのが素晴らしいところ。味わいもカジュアルで気軽に飲めるワインです。もう一方のワインは、フランス・アルザス地方のゲヴェルツトラミネールで造られています。どんな品種のぶどうもオレンジワインにすることにこだわった造り手のもの。醸造は、半分は全房(茎がついたまま)で発酵させるなど細かな工夫がなされていて、それが味に生きている。特に、左のワインは低価格ですし、入り口としても楽しめるオレンジワインです」

角打ちで「築地+ナチュラルワイン」体験を

酒美土場を訪れたら、軒先テラスで角打ちを体験したい。常時グラスワインが10種類用意され、500円から楽しめる。オレンジワインも必ず3、4種類は用意されている。おつまみは店内にある食品を買ったり、築地市場で買ったものを持ち込んだりできる。さらには、近くの海鮮居酒屋のメニューがあるので、出前を取ることもできる。魚とオレンジワインの相性の良さは岩井さんと喜納さんのお墨付き。ぜひ、築地のおつまみと酒美土場のナチュラルワインのマリアージュ体験をしてみよう。
また、イベント情報はFacebookやインスタグラムのSNSで発信中。築地の場を活かしたBBQイベントや試飲会イベントが企画されているので、気になる人はフォローしてほしい。

酒美土場
中央区築地4-14-18 妙泉寺ビル1F
03-3541-1295
12:00〜20:00、水曜定休
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