イタリアのエレガンスを気軽に1杯のグラスワインから
2017年7月に開店したラ・カンティネッタ多摩川は、95%がイタリアワインという「ほぼイタリアワイン専門店」。それもそのはず、店主の藤林佑介さんがたどってきた道は、レストランや酒販店とベースは変われど、イタリアワインひとすじ。培ってきた経験を提供するように、ワインショップ&立ち飲みワインバーというスタイルで営業している。
ラインナップを見ると、トスカーナやピエモンテといったイタリアが誇る銘醸地のクラシックなワインが多いが、これも藤林さんのこだわり。
「前職の小売店は大型店だったのでマニアックなものや土着品種も扱っていましたが、結局は王道がおもしろいと思っています。個人的には、透明感があってその中に奥行きのあるワインが好きですね。まずは、そうしたワインの良さを伝えていきたいと思っています」。
その手段としては、グラスワインで気軽に飲めるのがうれしい。カウンターで常時10種類以上のグラスワインが用意され、一杯500〜900円。酸やミネラルがしっかりしていれば、自然派の造りのようなおもしろいワインもある。ワインボトルを購入した場合も、店内で飲むことが可能。抜栓料ではなく、グラス代(350〜450円)を支払うしくみ。
実際に味わいながら、王道イタリアワインのエレガンスとは何かを教えてくれるお店なのだ。
イタリアワインの質の高さを伝えたい
店主を務める藤林佑介さんの経歴は、都内のイタリア料理店のサービス担当からスタート。2店舗目ではマネージャーを務め、ワインの仕入れも担当した。次に職を求めたのが、横浜にある日本一の品揃えを誇るイタリアワイン専門店。系列に飲食店の業務販売する会社もあり、ここで小売から業務販売、輸入、バール経営を経験し、最後には統括部長という責任者も任されていた。
若い頃から自分の店を持ちたいと思っていた藤林さんは、キャリア約20年を経て、自分の経験をすべて活かせる業態としてワインショップ&ワインバーを矢口渡にオープンした。
「矢口渡は僕の生まれ育った地元。蒲田・多摩川エリアはワインを飲める場がまだまだ少ないですが、いま、有名店で修行した料理人による洗練されたレストランやワインバーも増えています。こうした人達と手を組んで、ワインを飲むことを文化にするのが目標です。飲食店にもお客様を紹介して、レベルを1つ1つ上げていきたいと思っています」と、地元のワイン文化発展に挑戦していることを教えてくれた。
そのなかで伝えたいのは、やはりイタリアワインの素晴らしさ。
「ワインを買っていただいているお客様で多いのは、40〜50代の方。フランスのいいものを飲んできた方たちなので、そういう方に提案できるのがおもしろいところ。いま、ブルゴーニュやボルドーが値上がりしすぎて手が出せなくなっているので、イタリアの質のいいワインを紹介できるチャンス。舌の肥えた方に違いを感じてもらいながら納得できるものを提案したいですね」。
フランスの銘醸ワインにも負けないイタリアワインの質の高さを教えてくれるだろう。
王道イタリアワインが勢ぞろい
店内のワインはほとんどがイタリア。隣接するギリシャやオーストリアのワインも扱われている。アイテムは約500〜600種類。イタリアでもトスカーナやピエモンテなど北部や中部のワインが比較的多くなっている。
価格帯の中心は、2000〜3000円代。市場価格よりも少しお手頃に手に入れることができる。輸入元とも長い付き合いがあるため、特別なヴィンテージのワインや珍しいワインがセラーに入っていることも。イタリアワインの王道を知りつつ、最新のイタリアをアップデートしたいときには、ぜひチェックしよう。
店内のレイアウトと楽しみ方をチェック
店内は、入って左手が1500円からのデイリーワインが棚にずらりと並んでいる。ワインは入口に近い方から値段順に高くなって行くのでわかりやすい。その向かいにあるのが食材などの棚。突き当たり奥にカウンターがあるので、グラスワインを目当てにするなら、ここに直行しよう。グラスワインの注文はカウンターで希望のタイプを伝えおすすめしてもらおう。常時10種類以上から選べて、500〜900円。
▲カウンターの向こうには、エスプレッソマシーンとワイングラス。カフェとしてもワインバーとしても利用できる
購入したボトルをその場で開けるときは、抜栓料の代わりにグラス代を支払おう。グラスは、ベーシックなリーデルのヴィノム(左から2番目)なら一脚350円。華奢で繊細なヴェリタスや木村硝子だと450円。レストランでもここまでグラスにこだわってワインを飲めるところは少ない。飲みごこちもいいので、ほかではワインを飲めなくなってしまう人も!
あまり知られていないが、つまみや料理が絶品。その理由は、料理はすべて白金にあるイタリアン「Bitto」の伊東シェフによって作られているから。おつまみの盛り合わせやパスタがいただける。
プレゼントや特別なときにはこちらを覗いてみよう。
▲ワインセラーの一角にはイタリア綺羅星ワインのヴィンテージも揃う。なかなかお目にかかれないワインもあるので、ここぞというときのために覚えておきたい
おすすめは透明感のあるイタリアワイン
▲左)「O’SCRU O’SCRU (オスクル・オスクル)ETNA ROSSO DOC」Al-Cantara(アルカンターラ)¥3,500
右)「Montevertine(モンテヴェルティーネ)2013」Montevertine(モンテヴェルティーネ)¥5,500
*価格はメーカー希望小売価格。店頭では割引あり
おすすめとして紹介してもらったのは、やはりイタリアのエレガントな赤ワイン。まずは左の「オスクル・オスクル」のポイントは?
「イタリアのシチリア島にあるエトナ山という3000M級の火山の裾野、標高700〜800Mくらいのランダッツオというエリアで造られた赤ワイン。ネレッロ・マスカレーゼという品種が主体となっています。シチリアというと、よく熟した果実みとタンニンが豊富というイメージがありますが、こちらはそれとは反対のピノ・ノワールにも例えられるタイプ。標高が高く昼夜の寒暖差もある火山性土壌で、樹齢の高い樹で育ったブドウから造られています。そのため。複雑で透明感があって程よいミネラル感もあるワインです」。
ラベルのインパクトとは真逆の繊細なワイン。そのギャップをぜひ味わってみたい。
もう1つのおすすめは藤林さんにとって、アイドル的生産者モンテヴェルティーネの赤ワイン。
「キャンティ・クラッシコの中でも標高が高く冷涼なラッダ・イン・キャンティにあるワイナリー・かつてキャンティは組合の決まりで白ぶどうを入れなきゃいけなくなったことがありました。それに背くとキャティを名乗れなくなるのですが、『そんなことは関係ない』といって、サンジョベーゼの品質の追求を優先した造り手です。透明感があって複雑できれいな味わい。僕が大好きなサンジョベーゼのスタイルです」と、熱い思いを聞かせてくれた。先日、その当の生産者が来店したときには、興奮が抑えられなかったそう。グラスワインが開いていれば、生産者への愛を詳しく教えてくれるだろう。
ほぼ毎週行われるイベントの告知はFBで!
店内では週末を中心に毎週のようにイベントが開催されている。同じ生産者のタイプ別・年代別で試飲できたり、生産者が来日するイベントもある。今年の秋は毎週のようにイタリアから生産者が来日したという。このほか、「紅葉とロゼ」「多摩川で花見」など、季節感のあるユニークなイベントも開催されている。イベントの告知はFacebookで行われている。イタリアワインを楽しく囲みたいときには、ぜひ足を運んではいかが?
木定休(不定休あり)
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