カシエル(経堂)

目次

ドイツのいまを伝えるワインショップ

「ドイツワイン」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。「甘口の高級白ワイン」それとも「交配品種が多い」? 実は、現地ドイツでは辛口の白ワインが主流。リースリングは中心にありつつ、地球温暖化の影響もあってピノ・グリ(グラウブルグンダー)やピノ・ブラン(ヴァイスブルグンダー)などピノ系の栽培が増えるなど、世代交代と共に新しい流れがある。

こうした「ドイツワインのいま」を伝えてくれるのが2019年2月にオープンしたドイツワイン専門店・カシエル。軽快で酸が豊富なドイツワインが料理とマッチするのを体感してほしいとの思いから、ワインバーも併設している。ワインの価格帯は3000円台が中心で、従来のドイツワインよりもカジュアル。現代的なドイツワインをアップデートして、魅力を探りたい人にはうってつけのお店だ。

日常的に味わえる楽しさと目に見えない奥深さ

カシエルの代表を務めるのは、森彩さん。6年間、日系百貨店フランクフルト支店のワイン売場に勤務した後、2014年に帰国。日本でドイツワインを飲もうと思ったときに、その品揃えに驚いたと言う。

「ドイツでは辛口の白ワインが主流でしたが、日本に輸入されたドイツワインは未だに甘口ワインがメイン。あまりにもドイツの実情とずれがありました。お店を開こうと思ったのは、いまのドイツワインを知ってもらいたい、と思ったのがきっかけです。小さなお店ではありますが、お客様との接点を通じて、いまのドイツワインの姿を伝えたい。ゆくゆくはワインの選択肢の1つとして、ドイツを選んでもらえるようにしたいですね」

森さんにドイツワインの魅力を聞いたところ、まずは「食事との合わせやすさ」にあると言う。

「ドイツワインは、リースリングに代表されるように軽やかで酸がはっきりしているのが魅力。和食や日本の食卓にのぼる料理にも合うんです。お店では、季節の食材を使って素材の味わいを引き出すような料理を出しています。お家でもお店でも食事に合わせて、ドイツワインの可能性を探ってみてほしいですね」

一方で、目に見えない奥深さもドイツワインならでは。

「例えば、ミクロクリマの個性を伝えるなら、普通はラベルに畑の名前を掲げますが、ドイツは畑の名前以外に土壌の名前を掲げるんです。それくらいドイツの土壌は多彩で表現豊か。味わってみると本当に違うので、おもしろいですよ」と森さん。気楽に楽しむことも、マニアックに掘り下げることもできるのが、ドイツワインの魅力だ。

ほぼ全地域のドイツワインを品揃え。グラスでも楽しめる

お店のワインセラーには、ドイツワインがぎっしり。ドイツには13のワイン生産地域があるが、ほぼすべての生産地域のワインが網羅されている。ドイツの主流である白の辛口ワインが中心ではあるが、品種や造りにしばられずさまざまなタイプが用意されている。なかには、自然派のオレンジワインやピノ・ムニエ(ミュラーレーベ)で造られたブラン・ド・ノワールも発見できる。価格帯は3000円台が中心で、1600円のボトルから高級ワインまで取り揃えてある。

店内のバースペースは、グラスワインが充実。常時10種類以上は揃えられている。しかも、スパークリング以外は、50ml、100ml、150mlの3つのサイズがある。50mlずつさまざまなタイプを飲んでみるもよし、100mlと150mlにはおつまみが付くので軽いペアリングを楽しむもよし。

フラムクーヘン クラシック800円。料理はおつまみだけでなく、肉料理やパスタもあって、食事も十分できる

また、ショップで買ったボトルもグラスチャージ(一人300円、5人以上で1500円)を払って店内で開けることも可能。ドイツワインに合うおつまみやパスタをイタリアン出身のシェフが出してくれるので、仲間で盛り上がることも。ワインショップとしても、バーとしても、一人でも数人でも楽しめるお店となっている。

店内のレイアウトをチェック

店内は、手前にワインバースペース、奥にショップスペースのセラーがある。ワインだけを購入したいなら奥のスペースに直行してもいいし、それを購入して軽くカウンターで飲んで帰ってもいい。ゆっくりとしたい人はカウンターかテーブル席で着席してオーダーしよう。

おすすめは、ドイツの新潮流を感じる2本

左)「カイザーシュトゥール グラウブルグンダー トロッケン2017」ホルガーコッホ3300円
右)「フェルバッヒャー ゴルトベルク ピノ・ムニエ ブラン・ド・ノワール トロッケン2017」ハイト3300円

左のホルガーコッホは、バーデン地方のカイザーシュトゥールのワイナリー。「カイザーシュトゥールは重厚なシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)を造る地域で知られています。ホルガーコッホは家族経営の小さなワイナリーですが、地域のワイン造りに反して軽やかな造り。ビオワインで自然派とも言えますが、酸もミネラルもしっかりあるので輪郭や骨格ははっきりしているのに、果実味が豊か。特に2日目になると果実味が充満して素晴らしいワインになります」。

右はグラスの色でもわかるとおり、ブラン・ド・ノワール。「ハイトは、ヴュルテンベルク地方で1699年に創業した歴史あるワイナリー。現在は息子さんの代になって実験的なワイン造りを始めています。これはピノ・ムニエで造ったブラン・ド・ノワール。ドイツらしいきれいな酸味が表現されていますが、2日目になるとアンズのニュアンスが出てくるのでまた印象が変わってきます。ピノ・ムニエの華やかさが満喫できますよ」。

休日は昼からドイツワインで乾杯!

カシエルではフェイスブックやインスタグラムなどのSNSで情報を発信。日替わりメニューなどが日々アップされている。また、土日は14時から開店しているので、昼飲みもできる。さまざまな切り口で語られる森さんの話を聞きながら、新しいドイツワインを感じてみてほしい。

CASSIELカシエル
東京都世田谷区経堂1-18-6
03-6413-7990
17:00〜23:00(土日祝14:00〜)
火曜休
cassiel.jp
instagram:@cassiel.tokyo
Facebook:@cassiel.tokyo
Twitter:@cassiel_tokyo

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次