ワインカーヴ藤小西(中野坂上)

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角打ちできる隠れ家ワインショップ

ワインカーヴ藤小西は、マンションの一室にあるワインショップ。マンションのエントランスで「201」号室のインターホンを押して、ワインを買いに来たことを伝えて入るしくみだ。そうなると、ややハードルが高いように感じられるが、入ってしまえば、こじんまりとした店内は居心地がいい。店の中心にあるカウンターでは、毎日ワインが開けられ、有料試飲による角打ちができる。開いたワインを飲みながら、好みを伝えてワイン選びするのもおすすめだ。
店内の品揃えは、自然派ワインや日本ワインが中心。店は2016年から現在のスタイルに改装されているが、元々は老舗なので、自然派ワインも日本ワインも種類は多い。ワインや生産者について質問があれば、物静かな語り口で答えてくれ、セラーも案内してもらえる。帰る頃には、「隠れ家でワインを選ぶのもありだな」と妙に機嫌をよくしてくれるお店だ。

創業100年を迎える老舗の酒屋

藤小西の歴史をひもとくと、1922年にまでさかのぼる。「小西」と名のつく酒屋は東京にいくつかあるが、それらはすべてのれん分けなのだそう。藤小西も初代が銀座で修業し、四谷で創業したのが始まり。2代目までは飲食店への酒の卸売りが商いの中心で、一時は東京で5つの指に入るほど隆盛をきわめていたそう。青梅街道沿いの店舗脇には30台もの配送用トラックが停まっていたほどだったという。

ワインの小売りに転換したのは、3代目の戸谷昌弘さんの代になってから。高校卒業後、親類を頼ってハワイやアメリカに渡った後、友人の紹介でロンドンの語学学校へ入学。下宿先が地下にセラーのあるワイン愛好家の家庭だったことから、パーティーなどでヨーロッパのワイン文化を肌で知ることになる。またフランス人やイギリス人の名家の友人と銘醸地ワイナリーを巡り、「酒屋の息子なのにワインのことを何も知らない」と愕然とし、帰国。それが原動力となって、世界のワインガイドである『The World Atlas of Wine』を手に、さまざまな国のワインを調べ、いち早く日本へ紹介してきた。

なかでも、自然派ワインと日本ワインの取り扱いは早く、自然派ワインは90年代後半に新井順子氏の手引きでプリューレ・ロックやマルセル・ラピエールなど今では大御所となった生産者のワインを扱ってきた。日本ワインはルバイヤートの丸藤葡萄酒工業をきっかけに開拓し、当時気鋭のボーペイサージュやKidoワイナリーの扱いも早かった。雑誌『リアルワインガイド 』は、創刊時からテイスターを務めた。

また、2003年には店内の一部を「プチコニシ」として、有料試飲でのスタンディングバーを導入。現在のワインショップ角打ちの先駆けに。2016年12月には、現在のような隠れ家スタイルに改装した。

産地へ出かけ、日本ワインを発掘

3代目の戸谷さんから店を任されているのは、店長の住川大輔さん。前職は会社員だったもののワインやクラフトビールが好きで、世界のワイナリーを訪問して、収穫の手伝いをしていたこともあったそう。あるとき、仲の良いワインバーの店主から藤小西の求人の話を聞き、入社。2019年10月から店長として、店の運営やワインのバイイングなどすべてを担っている。

自然派ワインや日本ワインは自身も好きで、特に日本ワインは月に1、2度は産地を訪れているそう。

「日本ワインはまとめて試飲する場がないこともあって、コツコツと飲んでいます。扱いを決めるのは、実際に生産者の方に話を聴きにいってから。やはり自然な造りのワインが好きなので、北海道や長野によく行っています」

取材当日も先週訪れたという長野のワイナリーの話を聞かせてくれ、生の情報を教えてもらった。ぜひ、角打ちしながら、産地の様子や生産者の話を聞かせてもらおう。

店の色が見える個性的な品揃え

店内のワインはすべてセラーの中で保存・管理されている。自然派ワインと日本ワインが品揃えの中心で、その品揃えは約600種類。積極的に試飲会に訪れ、住川さん自身が気に入ったものを扱っている。その意図を聞くと、「ある程度、その店の色が見える方がいいのかなと思っています。結果的にお客様にもよさが伝わるんじゃないでしょうか」と住川さん。

自然派ワインは、フランスが多く柔らかく体に沁み渡るような味わいのものが多いそう。日本ワインでも自然な造りのワインを多く扱い、結果として北海道や長野のものが多いそう。今後は、ワイナリーの自社畑のブドウから造られたワインを増やしていきたいそう。オーナーの戸谷さんからの流れが品揃えにも受け継がれている。

店内のレイアウトと楽しみ方をチェック

ドアを開けると、広い角打ちスペースが店の中心にある。買い物は、奥のワインセラーをめざそう。

角打ちでは常時2〜7種類のワインが用意されている。ときに長年熟成された貴重な日本ワインがストックの中から出されることもある。

店内では、「サラミ(¥500)」「パルミジャーノ(¥500)」「ブーダンノワール(¥1,000)」など簡単なおつまみも販売され、角打ちでつまむこともできる。食品も無添加のものが扱わている。

店内の書籍コーナー。販売されている雑誌とは別に置かれているもので、図書館のように店内で読むことができる。昔の『The World Atlas of Wine』もある。
店内には、思わぬ秘蔵ワインが眠っていることも。カリフォルニアの90年代のワインを発見!

おすすめは期待の北海道の日本ワイン

「T6+254 2020」ドメーヌ・ユイ ¥2,200(税込)

おすすめとして紹介してもらったのは、北海道・余市でワイン造りをするドメーヌ・ユイのワイン。

「ドメーヌ・ユイの杉山さん夫妻は、2019年に初めてワインをリリースされた新しい生産者です。北海道で就農される前は、東京にお勤めで藤小西にもワインに買いに来られていたご縁があり、当店にご挨拶に来ていただきました。テイスティングするときも2人が熱心に議論を交わされていたのが印象的です。

こちらは、元々受け継いだ畑に植えられていたキャンベル・アーリーやナイアガラ、ポートランドをブレンドして、瓶内一次発酵で仕上げた微発泡のワインです。こうした品種はどうしてもインパクトのある香りが出やすいのですが、皮を傷つけず、やさしくプレスして造られています。香りを上手にコントロールされているので、ほんのり桃の香りが漂うような仕上がりです。

北海道余市には昨年秋に訪れたのですが、相当な広さの畑を2人でがんばってやっていらっしゃるようです。ゆくゆくは杉山さんが植えられたピノ・ノワールのワインができる予定なので、とても楽しみです」

イベントや新着情報はSNSで発信

ワインカーヴ藤小西では、店内で年に数回、ハムの生産者や寿司屋を招いたワインと食のイベントが実施されている。おいしい食とワインが楽しめるとして、人気のイベントとなっている。イベントや新着ワインの情報は、Facebookやインスタグラム、TwitterのSNSで発信中。気になる人は、登録しておこう。
2021年3月現在、イベントは状況をみてお休み中です。

ワインカーヴ藤小西
中野区中央2-2-9−201
03-3365-2244
12:00〜21:00/日月定休
http://www.fujikonishi.co.jp

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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