THE MED(吉祥寺)

THE MED外観
目次

地中海の食とワインが発掘できる専門店

店のワインショップスペース

ワインがたどってきた歴史を振り返ると、地中海が果たしてきた役割は大きい。ジョージアで発祥したワインはエジプトやギリシャの地中海を経て、イタリアやフランスのヨーロッパで食文化として発展した。交易の舞台になっただけでなく、そもそも地中海はワインの生産地であるワインベルト(北緯30〜50°)の中心に位置し、ワイン造りに適した産地でもある。そんな地中海に注目した料理とワインを楽しめるのが「THE MED(ザ・メド)」だ。

THE MEDでは地中海沿岸で造られたワインを約200種類扱っている。さらには、自社でインポートしているイタリアのワインも約80種類ある。地中海に特化した専門店はかなり珍しく、品ぞろえは都内随一といっていい。

地中海のなかでも、ギリシャやレバノンなど東地中海のワインが多くあり、こうした地域のワインは品質が高くリーズナブルなものがそろっている。イタリアやフランス、スペインのワインは、すでに人気の高い産地のワインではなく、コルシカ島やイタリア南部の産地など、いま注目したいエリアのワインがそろっている。知られざるおいしいワインを発掘したいという思いを叶えてくれるワインショップだ。

レストランスペース

店内の入ると、右側が地中海料理とワインを楽しめるレストランスペース、左側がワインが並ぶワインショップとなっている。レストランに併設されたワインショップで、ワインの販売もシェフが担当している。地中海料理と合わせておすすめのワインを注文して、気に入ったものを購入して帰るのがおすすめ。逆にレストランではワインショップにあるワインを抜栓料1,500円で開けることができる。地中海料理とあわせて、その魅力を探ってみよう。

品質が高まっている東地中海のワインに注目

THE MEDを運営する角田豊さん

THE MEDがオープンしたのは、2018年。THE MEDを運営している会社は、イタリアの食品やワインの輸入もしているため、それまでは地下を輸入品の倉庫、1階を雑貨や食品を販売所として利用されていた。2018年に飲食店の営業許可が下りたのを機に、地中海料理とワインの店として週末のみ営業をスタート。2022年5月からは現在のスタイルとなり、平日も本格的に地中海の食とワインを広めている。

地中海ワインと一口に言っても、面している国はかなり多い。フランス、イタリアなどのヨーロッパからチュニジアなどの北アフリカ、レバノンやトルコなどの中東まで。こうした各地のワインが用意されているが、なかでもギリシャやレバノン、トルコなどの東地中海のワインがフィーチャーされている。その理由について、THE MEDを運営する角田豊さんはワインの発展に重要なカギを握っていたからと話す。

「最近になって、レバノンの遺跡から2600年前のワイン圧搾機が発掘されました。ワインが発祥したのはジョージアですが、ワインの醸造技術の発展にレバノンが重要な役割を果たしていたことの証です。古代ギリシャ時代にレバノンからワインの交易が始まり、中世になるとイタリアと東方地域の間でレバント貿易がさかんになり、食材も東地中海エリアで取り引きされて発展しました。つまり、ワインも食も東地中海が発展の中心。そこにフォーカスするお店として、食とワインを両方楽しめる店をつくりました」

このエリアのワインはこの5年で注目され始め、品質も高まっている。なかでもおすすめなのがギリシャのワイン。

「昔はギリシャのワイン品種はほとんど知られていませんでしたが、いまはアシルティコやクシノマブロといった名前があがるようになりましたよね。私は現地に何度か足を運んでいますが、ギリシャのブドウ畑は、ヨーロッパのように丘陵地に広がっているのではなく、ワイルドな自然のなかにあります。ペロポネソス半島では畑があるのは標高1000mのエリアで、寒暖差があってミネラルと酸がしっかりとたくわえられ、引き締まった良いワインになります。環境の良さに加えて、最近は設備投資できる地元のワイナリーも増えて、技術も上がっていて、本当においしくなっていますね」

ギリシャだけでなく、レバノンのワインも注目ポイントがあると角田さん。

「レバノンは長らくフランス領だったため、国際品種のシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンと地元品種がバランスよく育てられています。ワイン造りも洗練されており、長い歴史を持つシャトー・ミュザールは、オーガニック認証をとりつつ、樽で熟成させてさらにリリースまで時間をかけています。ワインメーカーのセルジュ・ホシャールは1984年にイギリスのデキャンター誌でマン・オブ・ザ・イヤーにも輝いているほど。内戦のなかでもワインを造り続けてきた歴史がいま、花開いています」

同じような気候を持つ地中海の国々だが、それぞれのワインの歴史があって、特色がありそうだ。このほかトルコやチュニジア、エジプトなどなかなか見かけないワインが並び、さらに自社で輸入したイタリアワインも個性豊か。地中海ワインのそれぞれの国の魅力を追求してみるのも楽しそうだ。

店内のレイアウトをチェック

THE MEDの店内

店内は入って右側がレストランスペース、左側がワインショップスペースとなっている。レストランでグラスワインを飲みながら、ワインを相談するのがおすすめ。

レストランのカウンターはすぐ奥がキッチンになっている。珍しい地中海料理のメニューの短冊も楽しいディスプレイだ。

ワインショップには、食品やバルサミコ酢なども売られている。

地下セラー

地下は、ワインショップで扱っているワインや輸入されたワインの倉庫となっている。常連になれば、案内してもらうことができる。入手困難な掘り出し物もあるので、好きな人はチェックしたい。

おすすめはレバノンと伊カンパーニャ州のワイン

右/シャトー・ミュザール ホワイト2014 6,800円 左/ヌネス ファレルノ・デル・マッシコ タチート・ビアンコ2022 4,100円(いずれも税抜)

おすすめとして紹介してもらったのは、レバノンとイタリア・カンパーニャ州の白ワイン。

「レバノンのワインは、老舗のシャトー・ミュザールの白ワインです。オバイデとメルワーという品種が使われていますが、これは非常に古い地ブドウで、ヴィティスヴィニフェラというヨーロッパのワイン用ブドウの元になっている品種といわれています。ワインは熟成されてからリリースされているため、現行ヴィンテージでも2014年。そのため、花やスパイス、ハチミツなどの風味がある、とても複雑な味わいです。バックヴィンテージもありますので、ぜひ飲んでみてください」

もう1つのおすすめは、自社輸入されているイタリア・カンパーニャ州の白ワイン。

「カンパーニャ州でいま注目しているのがファレルノ・デル・マッシコDOCというエリアです。日本ではさほど有名ではありませんが、古代ローマ時代からワイン造りが行われていた土地で、カエサルなど歴代の皇帝にも愛されていました。ファランギーナ100%で造られたこのワインは、酸とミネラル感がしっかりあって、複雑さもあります。魚介にもあわせやすく、暑い時期に飲むには最高の白ワインです」

SNSでメニューや入荷情報をチェック

THE MEDのインスタグラムでは、珍しい地中海料理のメニュー紹介やワインの入荷情報が発信されている。出かける前にはチェックしてみよう。

THE MED

東京都武蔵野市吉祥寺南町1-15-16
0422-24-7212
月〜金 12:00〜15:00、18:00〜21:00LO
土日祝 12:00〜21:00LO
火曜定休
Instagram:@wine_themed

THE MED外観

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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