ワインの店いとう(すすきの)

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国内屈指のブルゴーニュ蔵

ワインを愛する人にとって、銘醸地ブルゴーニュは特別な響きを持つ。世界中にもコレクターが多く、コンディションの良いストックを抱えるワインショップは貴重な存在といえる。そんな店の1つが、札幌の「ワインの店いとう」。
店内のワイン売場は全体がワインセラーになっており、常に温度14℃以下、湿度60%以上。来店客がいないときはワインに光が当たらないよう電気が消してあり、保存状態は申し分ない。ここへ、約30年以上前から集められたブルゴーニュがずらりと並ぶ。

元々、100年以上の歴史を持つ酒屋で、3代目の伊藤仁彰さんが継いでからワイン中心の店に。ブルゴーニュに惚れ込み、当時の日本で知られていなかったフランソワ・ラブノー、ジョルジュ・ルーミエ、アルマン・ルソー、デュジャックなどトップドメーヌを紹介。以来、長年の扱いにより、入手困難なワインがコンスタントに入荷し、良質なバックヴィンテージのストックも多い。

「コンディションが抜群に良くて、おすすめがおいしいというのがうちの店の基本。そうでないと、全ての説得力がなくなる」とは4代目の伊藤桂さん。

店内の8割がブルゴーニュだが、それ以外の銘醸ワインもこうした思いで揃えられている。そのため、北海道の生産者やソムリエといったプロがプライベートで購入したり、ときには来日したブルゴーニュの造り手が「フランスにもない」と購入したりすることもあるそう。これぞという記念日やワイン会で利用するには間違いない。札幌を訪れたら、すすきのから足を伸ばしたい店だ。

2代に渡ってブルゴーニュをきわめる

「ワインの店いとう」の創業は、1910年。ワインへの転換は30年以上前と早かった。当時、北海道のシニアワインアドバイザーは、3代目の仁彰さんで数人目だったという。輸入ワインの選択肢がまだ少ないなか、仁彰さんがピンときたのはブルゴーニュ。「売れるもの」より「好きなもの」を選び、ほとんどブルゴーニュ専門にしてきたが、これが審美眼を磨くことにつながった。試飲経験から来る読みが備えられ、先のトップドメーヌを日本に紹介したり、その下の世代に当たるミッシェル・ラファルジュ、セラファンなど、「寝かせたら化ける」といわれるワインを早くから見極め、信頼を築き上げた。

4代目の桂さんは、大学卒業後すぐに家業に入り、父に倣って試飲能力と伝える力を磨いてきた。この頃になると流通コンディションも格段に上がり、現地に近いナチュラルで透明感のある味わいを感じやすくなってきたという。一方で、ブルゴーニュは予想以上に高騰した。

「ブルゴーニュだけを武器にすることが難しくなりました。でも、今はブルゴーニュの味に近い産地のピノ・ノワールを探すことはできる。オレゴンはもちろん、南アフリカやドイツがそう。ブルゴーニュでまだ高騰していない村もあるし、シラーでもピノのようなタイプもある。そうしたものも提案できます」と桂さん。

特に南アフリカは繊細さを持ったピノ・ノワールがあり、安定的に良質なワインを生み出せるポテンシャルもあるとみる。サンソーやシュナン・ブランにも注目しているという。また、桂さんはシーンに合わせたワイン選びも得意。贈るシーンやワイン会のテーマに合わせて相談してみよう。

フランス各地のきめ細かい品揃え

店内には、ブルゴーニュを中心に1000種類以上のワインが並ぶ。ブルゴーニュは、トップドメーヌから若手新星まで幅広い。倉庫でエイジングもしており、ヴィンテージストックも豊富。ブルゴーニュ以外もフランスや北イタリアのワインが充実。ジュラやサヴォワを注目株として取り扱っている。店で扱う基準としては、やはり試飲がベースになっているという。

「飲めば畑仕事をがんばっているかどうかはイメージがつきます。その中でも、ほかで代わりがきかない個性が光っていると惹かれます。この人にしか出せない、簡単に真似できないと思わせるワインはいいですね。それをきちんと一貫した基準を持って、自分の言葉で伝えていきたいと思います」
誠実に畑に向き合った生産者のワインからの言葉を紹介してもらえる。

店内のレイアウトをチェック


ワインはすべて扉をもう1つ開けた先のセラーに入っている。右側がブルゴーニュやフランス各地、左側がボルドーやカリフォルニアなど。手前には、デイリーワインやスパークリングワインがある。

バックヴィンテージも豊富。奥にはさらに普段は閉じられているヴィンテージ用のセラーもある。

おすすめは、ゆかりあるブルゴーニュのワイン

「サヴィニレボーヌ・オー・オー・グラン・リアール 2017」シモン・ビーズ ¥5,200(税抜き)

おすすめとして紹介してもらったのは、サヴィニー村に本拠がある千紗・ビーズさんが当主を務めるシモン・ビーズ。

「15年前に千紗さんと先代の故・パトリックさんにご来店いただきました。4年前には、シモン・ビーズの白ワイン醸造責任者だったギョーム・ボットさんがいるシャントレーヴ栗山朋子さんと共にご来店いただき、何かと縁のあるドメーヌです。

パトリックさんが造られていた当時は、クラシカルな造りのしっかりめのワインでしたが、現在はもう少しやさしくナチュラルな味になっています。そのせいか、2017年は早くから楽しめます。造り手も何かに影響を受けて変わることがあります。年代で変わっていくことを感じるのもおもしろいですよ」
年代による違いを知れるのもブルゴーニュのストックがある店ならでは。こうした楽しみ方を教えてくれる。

イベント情報はメール配信でキャッチ

ワインの店いとうでは、新着の銘柄情報やワイン会などのイベント情報の一部をメールで案内している。希望する人は、お店に行ったときや注文したときに伝えてみよう。今後は試飲会なども計画されている。その他、情報はホームページでも公開中。気になるワインがあれば、のぞいてみよう。

ワインの店いとう
北海道札幌市中央区南8条西8丁目1032
011-521-1849
10:00〜20:00(日 12:00〜18:00)
無休
http://www.wineshop-ito.com/

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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