蝦夷vinワインセレクションin横浜をレポート!

「あなたが選ぶ北海道のワイン」をキャッチフレーズに2010年から開催されている、蝦夷vinワインセレクション。これまで札幌で10回、各都市でも実施されてきた伝統あるワインイベントです。今年2月には横浜でも開催。北海道のワインがたくさん飲めると聞き、参加してきました。なごやかな雰囲気で盛り上がったイベントの模様をレポートします。

目次

会場は、横浜・中華街の名店「揚州飯店本店」

蝦夷vinワインセレクションの会場は、中華街にある「揚州飯店本店」。北京ダックやフカヒレといった本格中華が味わえる名店です。中華街のなかでも目を惹く、高級な店構えに気持ちが高まります。店に入り、会の参加を伝えると5Fとの案内がありました。エレベーターを上がると、ワンフロアが貸し切り。贅沢なワイン会の始まりを予感させました。

受付をすませると、円卓を案内されます。だいたい8〜9人で円卓を囲みます。ご一緒した円卓の皆さまは一人で参加されている方が多く、隣の方に「初めてのご参加ですか?」と声をかけると、続いて自己紹介いただきました。すると、自然な流れで同じテーブル全員が自己紹介する流れに。皆さん北海道のワイン好きという共通点があるせいか、とても和やかな雰囲気に。神奈川や東京の人が多かったですが、山形や長野から来られた方も。2回目以上の方よりも、初めての方が多かったです。

主催者の荒井早百合さんと揚州飯店チーフソムリエの赤木聖知さん

全員が着席すると、主催者の荒井早百合さんから挨拶がありました。
「蝦夷vinとは、山梨ワインを飲んで審査する『甲斐vin*』の北海道バージョンです。甲斐vinを知ったときから北海道のワインでもやりたい、と思っていたんですが、当時は種類も少なくできませんでした。ですが、北海道のワインも増え、10年前から開催できるようになりました。

本日は、【第一部】のブラインドテイスティングで10種類、【第二部】の中華料理とのマリアージュでは25種類、全部で35種類の北海道ワインをお出しします。ぜひお楽しみください」

北海道のワインが一度に飲めるチャンスを前にワクワクが止まりません!
甲斐vinは現在、開催されていません。

第一部では白ワイン10種をブラインドテイスティング

いよいよ第一部がスタート。2つのテーブルに、5つずつボトルが並んでいます。試飲時間は、20分間。荒井さんから「この後もワインは控えているので、グラスに少しだけ注いで1種類2分程度でテイスティングしてください」とのご案内が。結構、大忙しです!

こちらが投票用紙です。番号の隣にはコメントを書ける欄があります。ここに風味の感想、品種、ワイナリー名などを予想して書きます。最終的に好みのワイン3つを選んで投票するしくみ。20分間は、あっという間。少しずつ注いだつもりですが、すでにほろ酔いです。ちなみに蝦夷vinではスピトーンは用意されておらず、すべて飲むのがお約束!

こちらが第一部のワインでした。飲んだことがあるのも何種類かありますが、全然気付きませんでした。個性がはっきりしたワインがあると、控えめな風味のワインの味がとりずらくなるのかもしれません。

第二部は、中華料理&25種類のワインのマリアージュ

二部は、揚州飯店自慢の中華のフルコースでスタート。「前菜3種(クルミの飴焚き、クラゲのネギ油和え、香鶏の醤油煮込み)」がテーブルに運ばれます。中華の前菜をつまみながらワインって最高です!

この間、荒井さんによる第一部、第二部に登場したワインの解説がされていました。北海道のどこで生産されているか、どんな経緯でワイン造りをされているか、どんな特徴があるかなど。新しいワイナリーも多かったので、この説明はとても助かりました。

もちろんワイン25種類もオープン。完売している小規模ワイナリーのものもあります。

こちらもスパークリングや白ワイン。皆さん、お目当のワインから注いでいらっしゃいました。でも、たくさんあるので心配いりません!

コースの2皿目は点心。「シェフセレクトの蒸し点心」です。

「大海老のチャイニーズフリット アヒルの塩卵バター仕立て」

木村農園・木村幸司さんによるゲストトーク

荒井さんによる出品ワインの説明がひと通り終わると、お待ちかねのゲストトーク。今回は特別に余市町・木村農園の木村幸司さんがお越しになっていました。

木村農園といえば、北海道のピノ・ノワールの立役者。過去にはドメーヌ・タカヒコに使用され、現在は千歳ワイナリーやココファームにピノ・ノワールを提供されている栽培農家です。

「父の代からワイン用ブドウを栽培して、そろそろ40年くらいになります。今日出されたワインは2018年のピノ・ノワールです。ここ何年か’16、’17、’18と低温であまり条件がいい年ではなかったんですけど、その中ではまずまずなのかなと思います。ピノは例年になく2週間くらい開花が早くて、熟度の高いブドウがとれた年です。栽培をしていてうれしいのは、ワインを飲んで『木村さんのブドウだね』と言ってもらえることです。そこにおもしろさを感じます」

荒井さんによると、木村農園がピノ・ノワールで成功できたのは幸司さんのおかげなのだとか。

︎「もともと地域でピノ・ノワールを植えたんですけど、なかなかうまくいかず。皆さん伐採して違う品種を植えて行ったんですが、あるとき、農業組合の方にピノ・ノワールは武器になると言われました。それで、親父を説得して『じゃ、切らないでやろう』となったのが始まり。そこからここまで広くなりました」

木村さんが説得し、根気強くやり続けたから、北海道ピノ・ノワールの成功があったんですね。木村さんのブドウで造ったワインは本当においしくて、この会でも一番最初にボトルが空いたのが千歳ワイナリーのピノ・ノワール。こうしたエピソードを聞いて味わえるのも貴重な経験でした。

「豚足の南乳煮込み」。赤白7種が混醸されている「虹2018」が合いました!

もちろん赤ワインもたくさんあります。

木村さんのピノを使った、千歳ワイナリー「ピノ・ノワール2018」も。

第一部の結果発表!支持されたワインは…?

さて、次のプログラムは、第一部の結果発表。投票の多かった上位3銘柄が銅賞、銀賞、金賞に輝きました。

銅賞 ・・・ サッポロビール「グランポレール北海道ケルナー2018」
銀賞 ・・・ 千歳ワイナリー「北ワイン ケルナー2018」
金賞 ・・・ 北海道ワイン「北海道ケルナー2018」

投票で上位に選ばれたのは、すべて中規模以上のワイナリーによるケルナーでした。

これについて、荒井さんの解説によると
「蝦夷vin各地でやっていますが、上位に選ばれるのは、ある程度の規模のワイナリーなんです。皆さん、北海道のワインというと小規模なワイナリーのものを探し求める傾向にありますが、安定的に販売されているワインのおいしさにも気づかれたんじゃないかと思います。これは蝦夷vinで、皆さんに知ってもらいたいことの1つです。

各地で開催すると地域ごとに傾向がわかれるんですが、大阪だとデラウエアが人気だったりします。これを見ると横浜の人はケルナーが好きなんだなと思いました。飲み慣れているものが上位にくるんでしょうか?」

なんと、上位3つ全てに投票したピタリ賞の方がいらっしゃって、記念品のチーズが授与されていました。

コースもまだまだ続きます。メインの肉料理「ニュージーランド産ラム肉の鎮江黒酢ソース」。

「鶏肉入り五目チマキ」。ワインに合うごはん物といえば、チマキ!

「本日の特製デザート」。ワインにぴったりなイチゴがのったババロワでした。

そして、今回のコースを提供いただいた揚州飯店総料理長の吉田浩明さんからもご挨拶がありました。
「いつも蝦夷vinの会場として使っていただいていますが、毎回違うものを提供しようと思っています。私自身、ソムリエの赤木と出会ってワインを飲むようになり、中華料理とワインというのは無限の可能性があるのかなと思っています。今日は、赤ワインに合うように豚足のアレンジを考えて作りました。いま、横浜が元気がないですが、皆さまのお力を借りられればと思っています」

吉田総料理長の言葉どおり、こちらは中華とワインのマリアージュも楽しめるお店。本格的な北京ダックやクリスピー焼きなどの料理もいただけますが、コース料理は2500円からとちょっとしたお出かけにも利用しやすくなっています。

楽しかった蝦夷vinも、いよいよ最後の荒井さんの挨拶に。
「今日は、たくさん飲んでいただいたと思います。今回のワインは、北海道でも出回ってないのを、飲んでもらいたいなという思いで持ってきました。でも、3年後、5年後は買えるワインに育っていくと思いますので、長い目で見ていただければと思います。また、飲んで美味しかったなと思ったら北海道に来てください。来ないと飲めないワインもたくさんあります!」

荒井さんは、札幌で「道産ワイン応援団ワインカフェ ヴェレゾン」というお店を運営。随時変更される北海道のグラスワインを中心に約20種類が用意されていて、貴重なワインもたくさん。ぜひ、札幌へ旅行したら訪れたいお店です。

初めて参加した蝦夷vinで、すっかり北海道のワインの魅力を満喫しました。たくさんの種類のワインが飲めるというだけでなく、第一部、第二部の趣向を凝らしたプログラムの中に、個性あるワインを1つ1つ楽しんでほしいというメッセージが込められた内容。荒井さんは本当に喋りっぱなし、というくらいワインの情報を届けてくれました。ワインは、飲むだけ・情報を得るだけではその魅力は十分ではありません。味わいと生産者の思い両方を受け止めたときにその魅力が最大になると思います。蝦夷vinでは、それをワイン好きの方達と共有することができました。横浜に、しっかりと北海道の空気を届けてくれた荒井さん、ありがとうございました。

蝦夷vinワインセレクションは、毎年夏に札幌で開催されています。今年の11年目からは、趣向を変えて開催されるそう。新たな蝦夷vinがどんなイベントになるのか、期待したいですね!

2020年2月14日「蝦夷vinワインセレクションin横浜」ワインリスト
第一部
「北ワインケルナー2018」北海道中央葡萄酒 千歳ワイナリー
「ミュラートゥルガウ2018」松原農園
「澪標2018」マオイ自由の丘ワイナリー
「vin blanc NV」Occi Gabiワイナリー
「グランポレール北海道ケルナー2018」サッポロビール
「北海道ケルナー2018」北海道ワイン
「Oデラ カーサ2018」OSA WINERY
「ケルナー2018」TAKIZAWA WINERY
「ピノグリ2018」奥尻ワイナリー
「メリメロブラン2019」ドメーヌレゾン
第二部
「T2 2018」ドメーヌユイ
「ナカイシードル2017」ドメーヌ・タカヒコ
「ヴィンテージ2016」十勝ワイン
「Kamisato Blanc2018」蘭越いとう農園(10Rワイナリー)
「MUSUBI〜Another Story〜2018」ルレーブワイナリー(10Rワイナリー)
「バッカス2017」森臥(10Rワイナリー)
「ピノ・ノワール2017」サッポロビール
「ラ・メール」さっぽろ藤野ワイナリー
「ぴのぐり2018」10Rワイナリー(ココファーム)
「NEIRO Baccas2017」NIKI HILLSヴィレッジ
「UNITA Brut 2018」キャメルファーム
「オレンジピンクロゼ2018」宝水ワイナリー
「バッカス2018」濱田ヴィンヤード(タキザワワイナリー)
「メリメロルージュ2019」ドメーヌレゾン
「龍之介2018」あいざわ農園(10Rワイナリー)
「虹2018」えべおつWein(10Rワイナリー)
「LA BRLLIER2018」とわ北斗(10Rワイナリー)
「北海道100ドルンフェルダー2018」はこだてわいん
「十六夜ナイヤガラ自然発酵2018」リタファーム&ワイナリー
「T4 2018」ドメーヌユイ
「Terrace Wine2017」洞爺テラス(さっぽろ藤野ワイナリー)
「キトウシ2018」東川振興公社(10Rワイナリー)
「ピノ・ノワール2018」北海道中央葡萄酒 千歳ワイナリー
「ナカイミュラワ2018」KONDOヴィンヤード(栗澤ワインズ)
「TAPPU807-1 2011」YAMAZAKI WINERY
*( )内は委託醸造先や販売元

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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