かみのやまワイン会@Zoomに参加しました!

今年のGWはどこにも行けない代わりに、オンラインイベントが盛りだくさんでした。私もワイン関連のオンラインイベントに3つ参加。そのうちの1つが5月6日の「かみのやまワイン会@Zoom」(主催:M2DINING、井上眞理子さん 飲食店:神楽坂アガリス、新宿葡庵)でした。
こちらは開催予定だった「山形ワインバル」参加ワイナリーのうち、4ワイナリーとオンラインでつなぎ、トークするというもの。結果からいうと、上山の生産者たちが普段どんな感じで繋がっているか雰囲気がオンラインで十分伝わってきました。同時にそれぞれの個性や考え方もわかって、これまでにないワイン会でした。そんな会の内容をレポートします!

《参加ワイナリーはこちら》
・タケダワイナリー(岸平典子、岸平和寛)
・ウッディファーム&ワイナリー(金原勇人)
・ベルウッドヴィンヤード(鈴木智晃)
・ドロップ(出来正光)
《プログラム》
16:00〜 ウッディファーム&ワイナリー、ベルウッドヴィンヤード


     畑とワイナリーをライブ映像でご紹介
17:00〜 ワイナリーと参加者のトーク豚バラ肉の赤ワイン煮込み、野菜とベーコンのキッシュ、上山の山菜とカブの煮びたし

参加には神楽坂アガリスでワインセットの購入が条件でした。参加ワイナリーのワイン2本とディナー3品が組み合わされています。

目次

ウッディファーム&ワイナリーとライブ中継!


食事とワインを用意して、Zoomへジャンプすると、ウッディファームの金原さんが畑から登場!
「みなさん、こんにちは。僕はいま畑を見下ろす高台にいます。三角形の山の向こうに、タケダワイナリーさんやベルウッドヴィンヤードさんがあります。僕らのウッディファームは、上山市でも東の奥まったところにあるんです」と位置を説明してくれました。

畑はちょうどピノ・ノワールとシャルドネが展葉した状態。そろそろ芽かきの時期!


金原さんは、引き続きブドウ畑やワイナリーについてもレクチャー。説明してくれたウッディファーム&ワイナリーの概要がこちらです。

7.2haの自社畑があり、3万本の生産規模
自社畑のみのドメーヌスタイルのワイナリー
ヨーロッパ品種を植え付け
白はプチマンサン、アルバリーニョ 、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、
赤はメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン他
作付けが多いのはカベルネ・ソーヴィニヨンとアルバリーニョ
現地点で年間収穫量が多いのはシャルドネ
草生栽培で化学肥料や除草剤はなし、農薬も5割減
呑岡山を削った斜面の土壌で、他と比べて表土が赤土で果樹に適している
剪定は山形では珍しい一文字短梢
金原さんが説明している途中から「メエ〜」という声が。小屋をのぞくと、マスコットキャラクターの羊たちがいました。金原さんが草をあげると、集まってきて夢中でむしゃむしゃ。当初は、畑の雑草を食べてもらうために飼ったそうですが、果物をかじってしまうため、マスコット就任となったそうです(笑)
この後、醸造施設のあるワイナリーで、樽にワインが眠っている様子を説明。参加者からいくつか質問があり、「マスカットベリーAはつくらないんですか」との問いに、「山形のベリーAはすでに品質が高いと認知されていて、僕らのような新規参入にとって難易度が高い。僕ら新規のワイナリーは特徴を出すため、また社長の木村の意向もあってヨーロッパ品種で自社栽培している」と金原さん。山形でベリーA以外の可能性を追求されているようです。
ワイナリーの隣には、ピザ窯のあるマリアージュセミナーハウスという建物も。ホームページを見ると、土曜日にワイナリー見学やテイスティングを実施しているよう。現在は受け入れ中止ですが、再開したらぜひ行ってみたいです!

ベルウッドヴィンヤードからライブ中継

次に画面がジャンプしたのは、ヴェルウッドヴィンヤードの畑。上山市の久保手という地区にあります。ウッディファームとは、ちょうど山の反対側です。
鈴木さんは、山形のワイナリーに19年間勤務し、栽培醸造を担当。2017年に退職して新規就農されています。後継者のいない畑を継いだ分にプラスして、新しく10〜50aずついろいろな品種を植えた畑があるようです。就農して4年目ということで、樹齢2年〜4年の赤ちゃんや若木の畑がほとんど。そのため、畑にはグローチューブと呼ばれる生育を促す筒のようなものが置かれています。鈴木さんも畑の説明をしてくれました。

粘土質の土壌で石がごろごろしている
ピノ・ノワールとピノ・グリを去年初収穫して、混醸で醸造中
剪定は長梢のダブル樹、コルドンなど探りながら
株間は1.5M
斜面の畑は、下の方が水がたまるため樹勢が強く雑草も多く太い
上は密植したりして樹間を変えている
畑の説明が終わると、完成したばかりのワイナリーへ。移動している間、「山形には、タケダワイナリーの岸平典子社長が会長を務めるワイナリー勉強会があり、皆で栽培と醸造の両方を勉強するため年に5回くらい定期的に集まっている」と教えてくれました。地域でレベルを高めようとされてるんですね。
鈴木さんがワイナリーの前に停まった黒塗りの愛車の軽トラ自慢をしていると、それを聞いたタケダワイナリーの典子社長から「ガラが悪い」とのツッコミが。鈴木さんは「典子さんしかそんなこと言わないんですけどね」と苦笑い。上山の関係性が見えてきました(笑)
さて、完成したワイナリーですが、将来的にショップを併設したワイナリーにするそうです。醸造免許はまだないので道具や機械を置いてる状況。バルーンタイプのプレス機、除梗破砕機、濾過器、ステンレスタンクなどが置かれていました。トピックスとしては、最近ワイナリーのロゴマーク完成したとか。
「コロナが落ち着いたらきてもらえたらと思います」とのメッセージで締めくくられました。

乾杯のあとはワイナリーとトークで交流

2つのワイナリーのライブ中継のあとは、タケダワイナリーの典子社長から乾杯の音頭が取られ、上山市役所のワイン担当佐野さんからも挨拶がありました。

乾杯でワインを飲んでいる間、4つのワイナリーから配られたワインについての説明がありました(こちらは最後にコメントを掲載します)。そのあとは、ワイナリーが2つに分かれて参加者とのトーク会がスタート。私の参加した神楽坂アガリス班は、タケダワイナリー&ドロップでした。

タケダワイナリー 岸平典子社長

「タケダワイナリーの岸平です。1920年に創業して今年で100年ワインを造ってます。私で5代目。5haの自社畑がありまして、契約農家からもブドウを買っています」
こちらの画面には写っていないですが(バーチャル背景は下がると消えてしまうそう・・)、夫婦で参加されていました。

ドロップ 出来正光さん
「大阪出身で今年33歳になります。大阪でソムリエやインポーターの営業をやっていました。5年前にワインの勉強がしたくてオーストラリアのワイナリーで働かせてもらって、ワイン造りを志しました。帰国後は、山梨の勝沼醸造、山形のグレープリパブリックを経て、上山市久保手にて独立してワインをリリースすることになりました」

ワイナリーの自己紹介のあとは、ワイナリーとのトーク交流。活発に質問があった一部をご紹介します。

Q.上山は、日本の中ではどんなワイン産地ですか?

A.(岸平社長が回答)山形県は冷涼ではあるけれども、夏場は温度が高く、比較的、秋雨は少ないエリアです。収穫までの降水量としては1000ミリ以内で収まってます。夏場は暑いですが、25度以下の時間帯も長く、そうすると色がつきやすく、酸が落ちにくいです。色がのると同時に味ものってきます。世界の産地でどこと似ているかは難しいですが、ブルゴーニュの南、マコンあたりの印象があります。今、日本国内で注目されてる地域でいうと、北海道と長野、そこに山形は必ず入ってくる。ワインに向いている土地です。

Q.タケダワイナリーは1000円台のワインもあるが、何を飲んでもおいしい。その秘密は?
A.私がいつも考えてくれていることを褒めてもらってうれしいです。高いものが美味しいのは当たり前。ベーシックラインの1000円台のものにも強い思いがあります。
それを叶えるには、2つの方法があって、1つは農家さんと徹底的に話しあう。こういうものをやりたいから作ってくれ、そのためには彼らの生活もあって、買い付けの価格も話し合っています。もう1つは選果の徹底。ベーシックラインのワインも全部、私が選果に入って、どういう風にやるか女性スタッフに伝えています。その都度違うから悩みますね。選果は、全体を見て集中する能力があるのか女性が向いている。女性の方、手伝いに来てください(笑)。選果は、ロスが多くなるけれど、粒選りではなく房選りにしています。房の周りに健全なものもあるけど不健全な果汁はついちゃうので。

Q.出来さんのグランオルディネールの飲み頃はいつ? 今後どう行ったワインを作っていきたいですか?

A.瓶詰めして半年くらいがまとまってくるので、6〜7月くらいからは3年くらいがいいと思います。初めての仕込み方になりますが、仕込みの最初の方で亜硫酸使ってます。自分が飲み手としてはマメが出るのが嫌いなのと、サンスフルだと旨味が溢れる一方、全体としてはぼやけがちな味になる。ぎゅっと絞って、香りを嗅ぐとミネラルがストンと落ちるようなワインがいい。この仕込みに関しては、チャレンジングでしたが納得しています。半年後くらいから、よくなってくると思います。

参加者とのトークの中で、出来さんがビオディナミのカレンダーに従ってワインを美味しく飲める日があるという話から、ビオディナミの話へ。出来さんは、ニュージーランド・ギズボーンのミルトンヴィンヤードを訪ねた際、「雨が多く肥沃な土壌なのにビオディナミ栽培はどうか」と聞くと、「ビオディナミじゃない方がむずかしい」との答えが返ってきたのをきっかけに、山形でもビオディナミ栽培を実施しているそう。
これに対して典子社長も醸造の部分でカレンダーに従っている部分があるという話に。オリ引きやティラージュ、デゴルジュマンもカレンダーを利用するとうまくいくそうです

また、司会の方から「出来さん、上山に移住するともれなく典子さんがついてくる。そのあたりは大丈夫ですか」との問い(!)に対して、「めっちゃ仲良しです。でも僕以外はビビってしゃべれないかも(笑)」と。
上山には老舗のタケダワイナリーがあって、その周りに新しい生産者の人たち集まって、いい関係性を持って盛り上げているんだなと思いました。典子社長が勉強会をやられていたりして知識を深めるとともに、皆にツッコミを入れたりしつつ、新しい生産者さんも個性が豊かで、お互いに刺激を与えあってる。ブドウ栽培に向いているのはもちろん、ワイナリーの皆さんも魅力的ないい産地ですね!

トークの途中で、奥出雲葡萄園の齋藤聡さんが登場。
「Chees to the Future」プロジェクトの告知にいらっしゃってました。アマビエラベルで全国の飲食店、酒販店、ワイナリーを救おうというもの。詳しくはこちら。
https://www.facebook.com/groups/342696823374359/

タケダの典子社長とドロップ出来さんのトークが終わると、また全員が揃って、最後のご挨拶。金原さんと典子社長がとてもいいことをおっしゃってました。

金原:みんなの顔を見てやる気が出ました。農作業や醸造は辛いんですけど、ここで元気を貯めるんだなって気はしました。またみなさんと会える日を楽しみにしてます。

岸平:選果って、とてつもない作業です。いつもみんなに言ってるのは、やらなきゃ0だけど0.1でもやっていれば終わる。この騒ぎも出口はある。終わった暁には、リアルにみなさんとお会いできたら、と思います。どうもありがとうございました。

4ワイナリーの醸造家によるワインの説明

左)ベルウッドヴィンヤード「デラペティ2019」右)ドロップ「Grand Ordinaire2019」

ウッディファーム&ワイナリー「セミマセラシオンカルボニック2019」
ブドウを栽培していると弾かなきゃいけないものもあります。これまでジュースやロゼにしてきましたが、去年マセラシオンカルボニックをして世に出してみらたら評判が良かったので、今年は1800本ほど造りました。ヨーロッパの赤系品種を使っていますが、マスカットベリーAのような軽快でフェミニンな雰囲気が出ます。樽も清澄剤も使っていないので、ブドウ本来の味がカジュアルな値段でお楽しみいただけます。亜硫酸は少ないので、夏までに飲んでください。(金原さん)
ベルウッドヴィンヤード「デラペティ2019」
新規就農したときから引き継いたデラウエアの畑のワインを瓶内一次発酵させて、2017年から生産しています。2017年は冷涼で酸味が際立った味、2018年は一転して暑い年。それに対して2019年はバランスがよく万人ウケするワインになっています。亜硫酸を少なくして、除梗破砕時に少量入れているのみです。今後も定番ワインとして造り続けていくので、毎年のブドウの変化を楽しんでみてください。(鈴木さん)
タケダワイナリー「ブランドノワール樽熟成2019」
契約農家さんのマスカットベリーAをスキンコンタクトせず、そのまま搾って樽発酵樽熟成を6ヶ月して瓶詰めしたものです。ブランドノワールというのは黒ブドウから造った白ワインのことです。このワインは黒ブドウを軽く搾ってピンク色をしていますが、白ワインの造り方なのでそう呼びます。
冷やして昼下がりにコップで飲んでもらうのもおすすめですし、温度が上がると果実香や乳酸、バニラの複雑さも出てくるので、夜ゆっくり飲んでもらうのもいいですね。そのときは、リーデルのビア用グラスや木村硝子のピッコロなど少しボウルが大きめのグラスがおすすめです。(岸平典子さん)
ドロップ「グラン・オルディネール2019」
ワイン名は些細な日常にも価値があるという意味です。糖度21度くらいの早めに収穫した有機栽培のデラウエアを全房プレスして、樽で発酵。4、5ヶ月樽で経過して年明けに瓶詰めしました。なるべく醸造中の二酸化炭素を逃さないようにしてるので開けたてはプシュッと微発泡ワインになっています。それが香りを立たせてくれて、開けたてはフレッシュな状態です。ソーヴィニヨン・ブランなど小ぶりなグラスの方がいいのかと思います。3、4日くらいおいしい状態が続くので、ゆっくり飲んでください。(出来さん)
オンラインでしたが、山形・上山のワインのおいしさやワイナリー同士の雰囲気や個性が知れる素敵な会でした。皆さんも、上山に行ってみたくなりませんでしたか? 私はなりました。夏か秋に行けたらいいなーー!

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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