イタリア・ピエモンテの三大品種「ドルチェット」の特徴とは?注目ポイントやおすすめ生産者も紹介!

編集長・岡本

ドルチェットは、あのバローロの故郷イタリア・ピエモンテ州で地元の人達に愛される赤ワイン品種です。

親しみやすい品種ですが、いま注目したいポイントもたくさん。その魅力をお伝えします!

目次

イタリアの赤ワイン品種・ドルチェットとは?

©Wine and Travel Italy

ドルチェットは、主にイタリアの北西部ピエモンテ州で栽培されている赤ワイン品種です。ピエモンテ州はイタリア至高のワイン”バローロ”を産出する、赤ワインの銘醸地。そのピエモンテ州で、ネッビオーロ・バルベーラとともに三大品種の1つに数えられているのがドルチェットなのです。ネッビオーロやバルベーラと同じく、主に単一品種として赤ワインが造られています。

編集長・岡本

ちなみに、バローロはネッビオーロという品種から造られています!


Dolcettoとは「小さな甘いもの」を意味しますが、その由来は酸味が控えめなことだと考えられています。そのため、決して甘口ワインではなく、果実味の豊かな辛口の赤ワインです。

フードフレンドリーで親しみやすい味わいが特徴で、ピエモンテ州ではトラットリアのハウスワインなどデイリーワインとして愛されています。しかし、それだけではなく優良な畑を持つ意欲的な生産者もいます。

最近の流れについては、注目ポイントの項目を読んでみてください。

品種の特徴と味わい

ネッビオーロよりも約4週間ほど早く完熟する早熟品種のため、冷涼で標高の高い地域での栽培が適しています。そのため、ピエモンテ州ではアルプス山脈周辺の標高700mの畑では南南西の斜面に、標高が低い土地では北斜面に植えられています。ブドウはかびの病気にかかりやすく、場所によっては収穫前に果房が落ちる傾向にあります。また醸造では還元しやすい特徴を持っています。栽培、醸造ともにネッビオーロにくらべて安易だと思われがちですが、そうではありません。その点を理解して適切な環境で育てれば偉大なワインになります

編集長・岡本

ピエモンテ州では、ネッビオーロは標高400mの南西向きの適度に水分のある土壌、バルベーラは暖かい気候の粘度土壌が好適。品種特性がそれぞれ異なるため、同じエリアであっても別々の区画に植えられています。

ワインに仕立てた後は、外観は濃いルビーレッドの色合いを持ち、ブラックベリーや甘草の風味があります。上質なものはリコリスやアーモンドの香りを漂わせることも。しっかりした果実味はソフトでまろやかですが、酸は控えめでタンニンがしっかりしています。そのため、ソフトに抽出し発酵期間を短くするのが醸造のポイントです。

通常は早いうちに飲めるタイプのワインが多く、地元ではデイリーワインとして親しまれています。一方で、アルバやドリアーニ、オヴァーダで造られる高品質なものは骨格がしっかりしており、5年ほど熟成させて楽しむこともできます。

ドルチェットとバルベーラの違い

ドルチェットバルベーラ
色合い濃いルビーレッド濃いガーネット
香りブラックベリー、甘草、スミレの香り赤いベリー、血、鉄の香り
風味・味わい果実味があって柔らかくフレッシュ果実の厚みを感じる
酸味控えめ強め
タンニン強め控えめ
熟成後(長期熟成型のワインは少ない)乾燥肉や土のような香りが出る

ドルチェットとバルベーラは果実味の豊かさや生産地域が共通していることから、よく似ている品種だといわれています。ドルチェットが酸味が控えめでタンニンを感じるのに対し、バルベーラは酸味があってタンニンは控えめです。そのため、バルベーラのほうがトマトベースの料理に合うとされています。

代表的な産地(DOC、DOCG)

ドルチェット・ダルバ ©Wine and Travel Italy

ドリアーニ

イタリア・ピエモンテ州ランゲの南部、バローロの南側に隣接したDOCG。ドルチェットの発祥地であり、ドルチェットを代表する生産地として高品質なワインを生産。色合いの濃い、構成のしっかりした長期熟成タイプのワインも造られており、12ヶ月以上の熟成を経たワインはスーペリオーレの表記が示されています。北側の北東に向かって小さな尾根がいくつか走る標高が高いエリアでは、【ピアネッツァ、バルディヴァ、サン・ルイジ、サンタ・ルチア】といった重要なクリュが集合しています。

アルバ、ディアーノ・ダルバ

アルバ(DOCドルチェット・ダルバ)の生産地域は、バローロやバルバレスコを含む広い範囲に渡り、生産量全体の70%を占めています。ディアーノ・ダルバは、バローロとバルバレスコの産地の中間に位置する小さなエリアです。これらのエリアはドルチェットの産地として古い歴史を持ち、上質なドルチェットを産出することでも知られています。アルバから東側のエリアは軽やかなワイン、バローロやバルバレスコのエリアでは骨格のしっかりしたワインが造られています。

オヴァーダ

ピエモンテ南部の生産地。スーペリオーレのみDOCGに昇格。フレッシュな若飲みタイプから長期熟成タイプまで幅広いタイプのドルチェットが造られています。

ドルチェットのDOC、DOCG

DOCGDOC
ドリアーニドルチェット・ダックイ
ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバ/ディアーノ・ダルバドルチェット・ダルバ
ドルチェット・ディ・オヴァーダ・スーペリオーレ/オヴァーダドルチェット・ダスティ
ドチェット・ディ・オヴァーダ

イタリア以外の生産地

ドルチェットはイタリアが生産量のほとんどを占めていますが、わずかにアメリカやオーストラリア、ニュージーランドでも生産されています。

●アメリカ:カリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州など

●オーストラリア:ハンター・バレー、バロッサ・バレー、アデレード・ヒルズなど

ドルチェットに合う料理は?

©Wine and Travel Italy

ドルチェットの多くはフレッシュで柔らかな果実味があるミディアムボディの赤ワインです。そのため、前菜から軽めの肉料理まで、どんな食事でも比較的合わせやすくなっています。ピエモンテの前菜、生ハム、ローストした白身肉、ソフトまたはセミハードチーズなどと好相性です。

ドルチェットの注目ポイント

●意欲的な生産者によるドルチェットで、エレガントさを実感
ドルチェットはピエモンテ州の赤ワインのなかでは、高級ワインであるバローロやバルバレスコとくらべると、どうしても国際的な知名度は高くありません。また、地元ではデイリーワインのイメージがあって軽視されがちです。しかし、なかにはドルチェットの可能性を信じて、クオリティの高いワインを造っている生産者もいます。「カ・ヴィオラ」のジュゼッペ・カヴィオラ氏は「ドルチェットはふさわしい土地で造れば偉大なワインになる」として、意欲的にエレガントなワインを造り続けています。また「マルツィアーノ・アボナ」は1950年代にドルチェットを植えて、3代で素晴らしいドルチェットを造り続けています。ぜひ、そんなワインにも注目してみてください。

implicito ITALIAN WINE INDEX
Vol.39ep1.『Caviola(カヴィオラ)/ イタリアワイン飲み比べ』

https://youtu.be/diMCyJ8cIyA?si=H7GPrb-iGwFUfMpU



●ポスト“メルロー”!? 果実味が豊かでスムーズな味わい
ドルチェットは果実味が豊かでありながら、柔らかでフレッシュな味わいがあります。なかには骨格と凝縮感があり、タンニンを抑えた長期熟成ができるタイプもあります。この個性は、国際的な人気品種であるメルローにも似ていると思いませんか? さらに、いま求められているスムーズな飲み心地の赤ワインとも合致します。飲んでみたことのない人は、ぜひ一度飲んでみてください。

●綺羅星のごとき有名生産者のものでもリーズナブル
ドルチェット・ダルバの生産地域は、バローロやバルバレスコの生産地域をカバーしています。そのため、バローロやバルバレスコを生産している有名生産者は、ドルチェットを造っていることがほとんど。有名生産者のバローロやバルバレスコは、高価かつ入手するのが困難です。ところがドルチェットであれば価格も5,000円以下で手に入ります。もちろん味わいも秀逸。ピエモンテ憧れの味を、まずはドルチェットで味わってみるのもおすすめです。ただし、入手しやすいわけではないので、発売日をねらってみましょう。

《ドルチェットを生産している有名生産者》
●ジュゼッペ・リナルディ
●ジュゼッペ・マスカレッロ
●ブルーノ・ジャコーザ
●エリオ・アルターレ
など

秀逸なドルチェットを造る生産者

アルバとドリアーニから2大ドルチェット生産者をご紹介します!

カ・ヴィオラ

2023年の〈ベスト・イタリアン・ワインメーカー〉に輝いたジュゼッペ・カヴィオラ氏が経営するワイナリー。カヴィオラ氏は、カヴィオラ以外に約30のコンサルタントを請け負うイタリア屈指の醸造家。現在はバローロやリースリングなども造っていますが、1991年にドルチェットを造り始めたところからワイン造りをスタート。ドルチェットは偉大なワインになる可能性があるとして、情熱をもってドルチェットを造り、その評価は圧倒的。果実の凝縮感がありながら、緻密でエレガントなドルチェットを造り出しています。

ドルチェットをテーブルワインではなく、
クオリティワインとしてとらえた最初の造り手。

ラ・カンティーナ・ベッショ 店主 別所正浩さん

マルツィアーノ・アッボーナ

マルツィアーノ・アッボーナは、3代にわたってワインを造っている家族経営のワイナリー。ドルチェットの発祥地であるドリアーニに可能性を感じて1970年にワイン造りをスタートしました。現在はバローロやヴィオニエも造っていますが、フラッグシップはドルチェット。最初に植えたドルチェットの畑は、樹齢60年以上の古木もあり、4房しかブドウをつけない剪定を実践。その凝縮感のあるドルチェットは、2024年のガンベロ・ロッソで最高評価のトレ・ビッキエリを獲得しています。

ドルチェットといえば、ドリアーニ。
ドリアーニといえば、アッボーナ。

ラ・カンティーナ・ベッショ  別所正浩さん

編集長・岡本

両者は、ドルチェットをピエモンテの宝として情熱を注ぐ生産者です

ワインについて詳しいテイスティングコメントなどはこちらの記事へ!

特徴的な生産者

G.D.ヴァイラ

バローロの優良畑で造られる高樹齢のドルチェット

バローロ村を代表する生産者「G.D.ヴァイラ」はドルチェットの醸造にも熱心。通常、樹齢10年程度で植え替えられえるドルチェットが多いなか、平均樹齢は30年以上。収量が抑えられた凝縮感のあるドルチェットが造られています。通常のドルチェット・ダルバのほか、「コステ&フォッサーティ」という畑名が付いたキュヴェがあり、こちらはバローロの優良畑にドルチェットを植樹。フォッサーティは樹齢30年、コステは樹齢50年を超えた畑のブドウからドルチェットが造られています。

サン・フェレオーロ

リリースまで6〜7年かけて造られるドリアーニのドルチェット

ニコレッタ・ボッカが1992年にスタートした、ドリアーニのワイナリー。樹齢70年以上を数えるブドウの樹があり、樹上にて限界まで成熟させるなど、ドリアーニへの愛情は並々ならぬものがある生産者です。さらに「サン・フェレオーロ ドリアーニ」はリリースまで6〜7年もの歳月を費やすほど。圧倒的な存在感を持ったドルチェットが造られています。

まとめ

ドルチェットはピエモンテの人達に毎日飲まれているデイリーワインですが、意欲的な生産者の存在もあり、イタリアの高級産地の赤ワインでは穴場的なワインです。

もちろん、デイリーワインの飲み心地の良さも見逃せません。夏は軽く冷やして、冬は凝縮感のあるタイプをチョイスしてみましょう!

参考文献:「ワイン用ブドウ品種大辞典(ジャンシス・ロビンソン他)」「イタリアワイン産地ガイド(中川原まゆみ他)「日本ソムリエ協会教本(日本ソムリエ協会)」

Web:implicito ITALIAN WINE INDEX、Wine and Travel Italy、カヴィオラホームページ(イタリア)、マルツィアーノ・アボナホームページ(イタリア)、WINE TO STYLEホームページ、光が丘興産ホームページ、トスカニーホームページ、G.D.ヴァイラホームページ(イタリア)、テラヴェールホームページ、エヴィーノホームページ

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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