アルザスの人気生産者ジュリアン・メイエーの試飲イベントが東京・神宮前のVirtus(ウィルトス)で開催されました。
年に一度、入荷したと思ったら品薄のジュリアン・メイエー。一気に12種類も試せるなんて、二度とないかも!
ということで、今回は貴重なジュリアン・メイエーのテイスティングレポートをお楽しみください。
生きた土壌こそすべて。アルザスの巨匠ジュリアン・メイエー
いざテイスティングレポートをする前に生産者のジュリアン・メイエーについて、おさらいしておきましょう。
ドメーヌ・ジュリアン・メイエー | |
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当主 | パトリック・メイエー(1982年〜当主に) |
産地 | フランス アルザス ノータルテン村 |
設立 | 1705年 |
栽培 | 1990年から完全無農薬、1999年から100%ビオディナミ農法 |
名言 | 土を醸造家が借りている |
当主のパトリック・メイエー氏はビオディナミを実践するアルザスの巨匠の1人です。しかし、雑誌などに載ることはほとんどありません。これは彼がメディアにサンプルワインを送ることをしないから。ワインの販売についても会っている人にしか売らない主義を貫いています。しかし、気難しいわけではなく、オープンで職人気質な性格で、ワイナリーを訪問した人にはよろこんでワインについて説明するそうです。
東京ワインショップガイドでは、ナカザワ・ヴィンヤードの中澤一行さんを取材した際に彼とのエピソードを聞いたことがあります。中澤さんがクリサワブランを持参し、パトリック氏を訪問したときに「このブドウは生きた土壌で造られたワインだ」とすぐにピンときたそう。
パトリック氏といえば「土を醸造家が借りている」という名言があります。中澤さんとのエピソードは、その土地ならではの土壌のエネルギーを活かした畑づくりを実践し、自身も生きた土壌でできたブドウを熟知しているからこそ出てきた言葉といえます。
そんなジュアリアン・メイエーの本拠地であるフランスのアルザスは、区画ごとに変化に富んだ土壌が魅力の産地でもあります。実際にジュリアン・メイエーのラインナップを見ても、ワインは区画ごとに分けられて瓶詰めされています。
アメリカのジャーナリストであるアリス・ファイアリング氏の著書『土とワイン』によると、彼女がパトリック氏のリースリングを試飲したときに、期待したリースリングの風味がなかったことついて「これはあくまでミュンシュベルグ(区画の名前)だ。リースリングじゃない」と叱られてしまったそう。それくらい区画を尊重しているのです。
今回のラインナップは、リースリングやシルヴァネールの白ワインに、ピノ・グリやゲヴェルツトラミネールのオレンジワイン、ピノ・ノワールの赤ワインもあります。それぞれ品種ごと・区画ごとにどんな違いが楽しめるのか、ジュリアン・メイエーに共通する味わいとはなにか、期待がふくらみます!
レ・ブル・デマ (泡)Les Bulles d’Emma 2021
項目 | レ・ブル・デマ 2021 |
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タイプ/呼称 | 白・微発泡/Vin Mousseux de Qualité ヴァン・ムスー・ド・カリテ(ガス圧5.7) |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノ・ブラン、オーセロワ/45年・手摘み |
土壌 | 珪質土(砂岩花崗岩片岩片麻岩) |
発酵・熟成 | 収穫後、水平式圧搾機でプレス。ステンレスタンクで発酵(マロラクティック発酵あり)。 糖が残った状態で瓶詰め後、18 ヶ月間瓶内発酵・熟成 無濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル6mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | メイエ家の愛娘エマの20歳のお祝いに造り始めたキュヴェ |
輸入元テイスティングコメント
細かな泡立ち、グリーンイエロー色、搾りたてリンゴ果汁や洋梨、セルフィーユの香り、
ジューシーなリンゴの味わいでシャープさもありアフターに心地良い酸が残ります。
まずは、ピノ・ブランとオーセロワで造られたスパークリングワインです。イベント時は抜栓2日目で、もともと微発泡なので、ほとんど泡立ちはありませんでした。スタッフの方によると、抜栓直後は泡立ちはしっかりしていたそうです。
外観はクリアでやや緑がかったイエロー。香りはリンゴやハーブの爽やかな香りが漂います。
口に含んだ瞬間は、リンゴ酸の甘酸っぱさが口いっぱいに広がる味わいで、後味に少し苦みを感じました。
参加者の1人が遠くにマメを感じるとのことでしたが、私はわかりませんでした。少し紹興酒のような香りを感じたくらいです。
クリアな色合いのとおり、にごりのある重たい質感のスパークリングワインではなく、シャキッとしたタイプ。
酸もしっかり感じられるフレッシュでシンプルなスパークリングワインでした。
しっかりしたリンゴ酸のはじけるリースリングらしいスパークリングです!
RN 422リースリング RN 422 Riesling 2021
項目 | RN422 リースリング 2021 |
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タイプ/呼称 | 白・辛口/Alsace アルザス(Saint Pierreサンピエール村) |
品種/平均樹齢・収穫方法 | リースリング100% |
土壌/標高・向き | 砂質 花崗岩/250m・南東 |
発酵・熟成 | 水平式圧搾機でプレス。ステンレスタンクで発酵・マロラクティック発酵・熟成。軽く濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル6mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 国道422号線(RN422)から程近いSaint Pierre村のリースリングを使用 |
輸入元テイスティングコメント
黄金色の入ったグリーンイエロー色、白桃やリンゴ、キャラメリゼされたアロマ、複雑味のあるドライな味わいと
拡がるエキス感、後半にはほろ苦さと酸味が少し目立ちますが時間と共に落ち着きを見せるでしょう。
今回、リースリングが3種類あり、そのうちの1種類です。国道422号線の近くにある区画のワインで、3種類のなかでは低価格で購入できます。
外観はクリア、透明に近いイエロー。控えめな香りで、飲んでみると酸とミネラルが中心の涼しげな印象のワイン。
輸入元のコメントに焦ばしい香りとある通り、ドライな樽のような香りがありましたが、ステンレス発酵なので、還元的な香りなのかもしれません。でも嫌な印象ではなく、アクセントになっています。リースリング特有のペトロール香は、わずかにオイルっぽい香りがすると思う程度で、その特徴はわずかです。
酸やミネラルはしっかりありますが、厚みのある方向ではなく、とがっているようなきれいなイメージです。オイルっぽさがあるのでリースリングだとわかりますが、シャブリのようなパキッとした印象のきれいなワインでした。
アルザスのリースリングの品質の高さもわかりますし、夏に飲みたい味わいです。ジュリアン・メイエーのリースリングをまずは飲んでみたい、という人はこの価格帯から入ってみるのがいいと思います。
酸とミネラルが主体のきれいなリースリングがこの価格はうれしい!
リースリング ツェルベルグ Riesling Zellberg 2021
項目 | リースリング ツェルベルグ 2021 |
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タイプ/呼称 | 白・辛口/Alsace Lieux-dits アルザス・リューディ |
品種/平均樹齢・収穫方法 | リースリング100%/55年・手摘み |
土壌/標高・向き | 泥灰土 砂質/200m・南東 |
発酵・熟成 | 600Lの木樽で発酵・マロラクティック発酵・熟成 軽くフィルター・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル7mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | ツェルベルグ=渓谷という名の区画は、寒暖の差が激しく、おろし風により凝縮した健康なブドウが育つことから |
輸入元テイスティングコメント
グリーンイエロー色、すりおろしリンゴやカリン、白桃、香ばしい香り、 口中に拡がりがありエキスに溶けた心地の良い酸味、徐々にボリュームが増しジューシーな味わいを楽しめます。
次はリースリングの2種類目です。渓谷という名前の区画で、ここでは凝縮したブドウが育つようです。
外観は、クリアで淡いグリーンがかったイエロー。先程のR422より少し色がのっています。
香りにリンゴやカリンのほか、白桃などとろりとした豊かなニュアンスも加わってきています。
飲んでみた最初の印象は、果実のふくらみを感じる厚みがあり、やわらか。さきほどのシャープな印象のリースリングから丸みのあるリースリングの方向になっています。
ワインをじっくり味わうと、果実の広がりをしっかり感じられるとともに心地良い酸味も感じられます。厚みのあるワインの理由は、しっかりした酸に支えられていることがわかります。後味も酸でフィニッシュしますが、すっぱい酸ではなく心地よい余韻につながる味です。
ボリューム感のあるリースリングは、全体がまとまった印象で安定感のある印象になります。
スタッフのかたによると、飲食店の方がお店で使う用に買っていかれたようです。たしかに食中酒としてワインを飲みたいときにぴったりくるリースリングです。香りのトーンもすりおろしリンゴやカリンが中心で、ペトロール香や花の香りがないのも食事に合わせやすいポイント。
厚みのあるジューシーさを魅力的な酸でまとめた、洗練度のあるリースリングを飲みたい人におすすめです。
食中酒としておいしいリースリングならこれ!
リースリング グリッテルマット Riesling Grittermatte 2021
項目 | リースリング グリッテルマット 2021 |
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タイプ/呼称 | 白・辛口/Alsace Lieux-dits アルザス・リューディ |
品種/平均樹齢・収穫方法 | リースリング100%/45年・手摘み |
土壌/標高・向き | 砂岩/280m・南 |
発酵・熟成 | 水平式圧搾 20hlのステンレスタンクと600Lのフードルで発酵。マロラクティック発酵・熟成。無濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル6mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 「ワインは生きるための塩分を運ぶミネラルによって生かされている」と当主。火山質の豊かな成分を含む砂岩で育ったリースリング |
輸入元テイスティングコメント
黄金色の入ったグリーンイエロー色、白桃やリンゴ、キャラメリゼされたアロマ、複雑味のあるドライな味わいと拡がるエキス感、後半にはほろ苦さと酸味が少し目立ちますが時間と共に落ち着きを見せるでしょう。
今回の3種類のリースリングの中で、最も高価。ハイクラスの畑でできたリースリングです。
外観はクリアで、イエロー。口に含んでみると、しっかりした酸があり、それを凌駕するだけの豊富なミネラルに驚かされます。
オイルのような厚みもしっかりとあり、骨格もがっしりして、複雑味のあるワインです。
さすがハイクラスの畑です。火山質の豊かな成分を含む砂岩で育ったブドウを使っていて、さらに南向きという絶好の条件にあるので、ミネラル感が豊かでしっかりとした骨格があるのも納得できます。
ミネラルがあって複雑味があるリースリングですが、丸みがあるというよりも、バランスの取れた多角形のような膨らみがあって、ポテンシャルを感じさる部分もあります。
香りの要素として白桃やリンゴ、キャラメリゼしたアロマというのも、年を重ねるとさらに凝縮して蜜のような複雑さがまして行くと思います。
パトリック・メイエ氏は、リースリングに最も力を入れているようなので、その点でも期待できます。買っておいて1年、2年と寝かせればさらに本領を発揮してくれるでしょう。
ジュリアン・メイエーのリースリング最高峰のミネラル感と複雑さ!
ピノグリ マセラシオン Pinot Gris Maceration 2021
項目 | ピノグリ マセラシオン 2021 |
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タイプ/呼称 | オレンジ・辛口/VdF ヴァン・ド・フランス |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノグリ100%/40年・手摘み |
土壌/標高・向き | 泥土 花崗岩/200m・北東 |
発酵・熟成 | 全房で、垂直式圧搾機内で醸し後プレス。トロンコニック樽で発酵・マロラクティック発酵・熟成。 軽く濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル10mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | ピノグリを全房で醸し、発酵・熟成。醸しは生命のメカニズ ムを解放するプロセス、ワインの本質はブドウのエネルギーとミネラルの力から生まれる |
輸入元テイスティングコメント
ビワのようなオレンジカラー、やや濁りと粘性、マンゴーや洋梨、スワリング後には黄桃の甘い香りと木材や茎の香り、リンゴの種まわりのほろ苦さと少し高めの酸がアタックにあり洋梨の豊かな果実味が拡がります。
次からはオレンジワインです。まず1つめはピノグリをマセラシオン(皮ごと漬けて発酵)したタイプです。
外観は、ややにごりのあるオレンジ色。白ワインとは違って甘さのあるマンゴーの香りも混じってきています(期待大)!
飲んでみると、びわやマンゴー、オレンジに茎のような香りが混じってきて、皮のニュアンスが出ているのがわかります
果実味が出ていてオレンジワインらしい丸みやふくよかさが感じられて、旨味もあるのですが、全体的にはドライにまとまっています。
ウィルトスのスタッフの方によると、ジュリアン・メイエーは味わいを出しながら、甘みを残さずに揮発酸でバランスを取るのがうまいとの話。
つまり、揮発酸が生成されると刺激的なパイナップルのような甘酸っぱい香りがします。しかし、あくまでも酸の香りなのでワイン自体はドライにできますし、酸で心地よくフィニッシュさせることもできます。過剰に出るときびしい味になりますが、多少であればアクセントにもなってきます。そのバランスが巧みで、甘さの風味で満足度を与えながら辛口でしっかりまとめてあるということです。
このピノグリ・マセラシオンのキュヴェは、赤ワインかというくらいルビー色をしたヴィンテージがあったようです。年によって抽出具合を変えているのかもしれません。なので、2021年以外はまた違った仕上がりになっていそうです。
ただ、2021年はオレンジワインらしい旨味がほどよくあって、ジュリアン・メイエーらしさも感じられる1本でした。
ピノグリ マセラシオン ファニーエリザベス Pinot Gris Maceration Fanny Elisabeth2021
項目 | ピノグリ マセラシオン ファニーエリザベス2021 |
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タイプ/呼称 | オレンジ・辛口/VdF ヴァン・ド・フランス |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノグリ100%/40年・手摘み |
土壌/標高・向き | 泥灰土泥土砂砂岩花崗岩/280m・南東、北 |
発酵・熟成 | 全房でステンレスタンクで醸し 垂直式圧搾機でプレス フードルで発酵・マロラクティック発酵 600Lの古樽で熟成 濾過あり・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル10mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 泥灰土・砂岩・花崗岩など様々なテロワールで育つピノグリを全房で醸し、発酵・熟成。醸しは生命のメカニズムを解放するプロセ ス、ワインの本質はブドウのエネルギーとミネラルの力から生まれる。ファニー・エリザベスは娘さんの名前から |
輸入元テイスティングコメント
綺麗なオレンジ色、控えめな香りにアプリコットやびわ、トースト、ハチミツ香、果実味とオレンジピールのほろ苦さ、
心地の良い味わいでアフターまでバランスよく拡がります。
次もピノグリのオレンジワインです。ピノグリ・マセラシオンの上級キュヴェに当たり、娘さんの名前「エリザベス」がついたキュベだけに期待できます!
外観はややにごりのある、オレンジ色。アプリコットやビワ、揮発酸の香りが出ています。通常のピノグリ・マセラシオンよりも香りが強く出ていて、おいしそうな気配が漂ってきました。
飲んでみると、味わいにもアプリコットやビワの風味が出ていて、果実味がグッとのっています。もちろん、酸はしっかりとあってとろんとした豊満な味わいです。それでいて、オレンジピールのほろ苦さがアクセントになっています。
土壌の説明には〈 泥灰土 泥土砂 砂岩 花崗岩 〉とあり、とても複雑な土壌をもつ区画で育ったブドウが使われています。それだけに味わい深さがあるのでしょう。
時間が経つに連れ、果実の強さだけでなくそれらがじんわりとなじんでまろやかな風味に変わっていきます。酸もミネラルもあるので、内側からみなぎるようなエネルギーもあって、充実した味わい。単独で飲んでも、いつまでも飲んでいられる味わい深さがありました。抜栓して時間が経っても、くずれない強さもあると思います。
12種類のうち、これが一番おいしいと感じました。イチオシです!
レ ピュセル マセラシオン Les Picelles Maceration2021
項目 | レ ピュセル マセラシオン 2021 |
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タイプ/呼称 | オレンジ・辛口/VdF ヴァン・ド・フランス |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ゲヴェルツトラミネール100%/60年・手摘み |
土壌/標高・向き | 泥灰土(リューディ・ツェルベルグ)粘土石灰(リューディ・フロンホルツ)/250m・南東、南 |
発酵・熟成 | 70%は直接圧搾 30%は全房でステンレスタンクで醸し 水平式圧搾後、アッサンブラージュ 発酵・マロラクティック発酵・熟成 軽く濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル8mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | リューディ・ツェルベルグとフロンホルツのパーセルと、無垢な味わいを掛けてピュセル=処女と名付けました。泥灰土と粘土石灰土壌で育つブドウを30%は醸し・70%は直接圧搾し発酵・熟成しました。 |
輸入元テイスティングコメント
濁りある濃いイエローの外観、ライムやシークワーサー、黄桃、マン ダリンの香り、
生姜シロップのようなほろ苦さと甘みのあるエキス感、 良質な果実味、たっぷりの複雑味のある味わいが印象的です。
次もオレンジワインですが、こちらはゲヴェルツトラミネールのブドウで造られたもの。
平均樹齢が60年と古い区画で、リースリング グリッテルマットと同じ価格。12本のなかでもっとも高価な1本です。
外観はややにごりのあるオレンジ色。黄桃の香りがしっかりとしているなかに、茎や芯のような香りがまじります。そのせいか、ものすごく甘い風味ではないことが予想できます。
実際に味わってみると、桃ジュースのようなとろりとした旨味がのっているものの、後半の伸びにライムのような酸や透明感があって、味わいが甘みに転がらずドライな仕上がりになっています。
ゲヴェルツトラミネールですが、オレンジワインということもあってライチやバラのような香りがなく、スパイシーな風味の方向性も。白こしょうというよりは生姜のような雰囲気です。
ほかのワインよりも酸はひかえめに感じられ、液体に複雑みやエキス感があるところもおもしろく感じられます。
全体にまろやかで丸みがあって、味わいに桃のような旨味がしっかりとのっていながらドライで生姜のような余韻を残すところも印象的。唯一無二のゲヴェルツトラミネールのオレンジワインを飲んでみたいという人には、ぜひおすすめしたいワインです。
桃ジュースに生姜のアクセントがありながら透明感もある!
PG&PN ルル PG&PN LouLou2021
項目 | PG&PNルル 2021 |
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タイプ/呼称 | 赤・辛口/VdF ヴァン・ド・フランス(Saint Pierreサンピエール村) |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノグリ50%、ピノノワール50%/35年・手摘み |
土壌/標高・向き | 沖積土 砂利 花崗岩/150m・南東 |
発酵・熟成 | 全房でステンレスタンクでセミマセラシオンカルボニック 垂直式圧搾機でプレス ステンレスタンクで発酵・マロラクティック発酵 600Lの古樽で熟成 濾過あり・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル5mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 沖積土・砂利・花崗岩のテロワールから生まれるピノグリとピノノワールをセミマセラシオンカルボニック後、発酵・熟成 |
輸入元テイスティングコメント
淡いルビー色、ラズベリーやクランベリー、ドライハーブや森林のアロマを感じます。上品でバランスのよいスムーズな口あたりのアタックで旨味がしっかりとあり、タンニンが味わいのコアの部分を形成する綺麗に仕上がった逸品です。
次はピノグリとピノノワールが混ぜられてた赤ワイン、という変わり種です。どこが変わっているかというと、ピノグリは主に白ワインで使われている品種だからです。とはいえピノグリの皮は緑色ではなく青紫色をしていて、最近はオレンジワインにもよく使われています。元々ピノノワールとは遺伝子的にも近いので、ワインのタイプにとらわれることなく、畑で育った2つを組み合わせてみたのでしょう。
外観はクリアで淡いルビー色。通常のピノノワールの赤ワインよりも紫が弱く、オレンジ色で赤が薄められたような色合いです。
テイスティングコメントに“ラズベリーやドライハーブのアロマ”とあるように、ベリー系の香りに青っぽいニュアンスの香りも混じってきます。香り自体は控えめな印象です。
飲んでみると、果実味ののり方が赤ワインのようにベリーの果実味がぐっとくるというよりも、旨味主体でそこに赤ワインのベリーのニュアンスが混じっているような風味。ただし、最後に甘酸っぱさとタンニンの渋みがきちんとあるので、そこに赤ワインらしさが感じられます。
なので、赤ワインとして飲むと不思議な感覚になるかもしれませんが、ボディ自体はやわらかで、スムーズな飲み心地があるおいしいワインです。
タイプにこだわらず、ジュリアン・メイエーのブドウを味わって、その世界を堪能するという意味ではおもしろい体験ができます。
かなり珍しい!ピノノワールとピノグリの赤ワイン!
ピノノワール レ ピエール ショウド Pinot Noir Les Pierres Chaudes2021
項目 | ピノノワール レ ピエール ショウド2021 |
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タイプ/呼称 | 赤・辛口/Alsace アルザス |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノノワール100%/50年・手摘み |
土壌/標高・向き | 花崗岩/300m・南 |
発酵・熟成 | 全房でステンレスタンクでスミマセラシオンカルボニック 垂直式圧搾機でプレス ステンレスタンクで発酵・マロラクティック発酵 600Lの古樽で熟成 濾過あり・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル5mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 「シリカの力によって命を吹き込まれたエーテル的な垂直性によってブドウが養われている」 南向きの花崗岩で育つピノノワールをセミマセラシオンカルボニック後、発酵・熟成しました |
輸入元テイスティングコメント
淡いルビー色、クランベリーやアメリカンチェリー、トマトの香りを感じます。摘みたてベリーの果実感がアタックにあり、
ほろ苦さのある中程度のタンニンとたっぷりのエキス感が楽しめます。
次はピノノワール100%の赤ワインです。アルザスのピノノワールは、上質なので期待も高まります。
外観はややにごったルビー色。さくらんぼやトマトの香り。トマトの香りというのが、赤ワインとしてはあまりないニュアンスです。
飲んでみると、ピノグリ&ピノノワールの赤ワインよりも確実にベリーの果実味がのってきていました。くらべてみると、とてもそれが印象に残りましたが、全体的にすずしげな印象で味わい自体は強いわけではありません。
どちらかというとピノノワールのしみじみとしたおいしさがあるワインで、控えめな旨味がのってきていて、そのエキス感が楽しめるワインです。
スタッフの方や参加者の方が「夏に飲みたい赤ワイン」とおっしゃってましたが、まさに暑い季節に飲みたい涼やかでしみじみとした控えめな旨味と果実味が心地よいワインでした。
夏に飲みたいエキス系ピノノワール!
シルヴァネール ツェルベルグ Sylvaner Zellberg2021
項目 | シルヴァネール ツェルベルグ2021 |
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タイプ/呼称 | 赤・辛口/Alsace Lieux-dits アルザス・リューディ |
品種/平均樹齢・収穫方法 | シルヴァネール100%/60年・手摘み |
土壌/標高・向き | 石灰 泥灰土/300m・南東 |
発酵・熟成 | 水平式圧搾機でプレス 600Lの古樽と卵型セメントタンクで発酵・熟成 軽く濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル10mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 朝日の光を浴びる細かな石灰と泥灰土壌の畑で育つシルヴァネールをプレスし、600Lの古樽と卵型セメントタンクで発酵・熟成しました |
輸入元テイスティングコメント
輝きのあるグリーンイエロー色、スウィーティやライムのシャープな香りやアップルミントのアロマ、拡がりのある旨味を包括したアタック、上品な酸味はキレがよくフレッシュな果実味にシャープなアフターが心地の良い逸品です。
次からの3本は日本への入荷本数が少ない、有料試飲にあたるキュヴェになります。まずは、シルヴァネールの白ワインです。
外観は、にごりがあって、しっかり色づいた黄金色がかったイエローです。
ライムやスイーティーなどの控えめな香りではじまるワインは、味わいにもライムのような果実味を感じますが、フレッシュなだけでなく旨味と厚みが感じられます。
テイスティングコメントに“シャープなアフター”という表現がありますが、私には塩のような海藻のような雰囲気の後味が感じられました。石灰と泥灰土壌の畑のようなので、そこからミネラルが感じられたのかもしれません。
全体にはさわやかですが、旨味と酸味によってボディがかたちづくられているところに個性があるワインでした。こちらも食事に合わせるとよさそうです。
旨味と厚みとフレッシュさが両方ある白ワイン
ミュスカ プティ フルール Muscat Pettite Fleure 2021
項目 | ミュスカ プティ フルール2021 |
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タイプ/呼称 | 白・辛口/Alsace Lieux-dits アルザス・リューディ |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ミュスカオットネル100%/45年・手摘み |
土壌/標高・向き | 沖積土 砂利 泥土/150m・南〜東 |
発酵・熟成 | ステンレスタンクで発酵・マロラクティック発酵・熟成 軽く濾過・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル16mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | ノータルテン村、早なりの歯ごたえのあるブドウのみを選果し、ステンレスタンクで発酵・熟成しました。 |
輸入元テイスティングコメント
淡いグリーンイエロー色、トロピカルフルーツや金柑、コンポートの甘い香りを感じます。ドライなアタックで口に含むとブドウ由来の甘い香りやネクタリン、バナナの香りもプラスされ、アフターには心地の良い酸味がアクセントとなっています。
次はミュスカオットネルの白ワインです。ミュスカオットネルは、マスカット(ミュスカ)系の品種で、シャスラと特定されていないマスカット品種を交配したものだそうです。
外観は、ややにごりのあるイエロー。花や蜜、シロップのアロマが漂ってくるとても魅力的な香りからはじまります。
飲んでみると、花やコンポートの風味がありますが、後味には透明感があり、リースリングと同じようにドライな印象です。
全体にまろやかさや透明感があるので、酸味はほかのワインよりも控えめに感じられます。シロップの感じがあるので、甘さを予想しますが、透明感のある酸味が最後にくるので、とても上品さを感じるワインでした。
花や蜜の風味に透明感のある魅力的なミュスカ系!
ピノノワール ル ヴィユ シュマン Pinot Noir Le Vieux Chemin 2021
項目 | ピノノワール レ ヴィユ シュマン2021 |
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タイプ/呼称 | 赤・辛口/Alsace アルザス |
品種/平均樹齢・収穫方法 | ピノノワール100%/12年・手摘み |
土壌/標高・向き | 花崗岩 砂 シルト 粘土/300m・東 |
発酵・熟成 | 全房でステンレスタンクでスミマセラシオンカルボニック 垂直式圧搾 ステンレスタンクで発酵・マロラクティック発酵 600Lの古樽で熟成 濾過あり・無清澄 |
SO2 | 無添加:トータル6mg/L |
キュヴェの由来・特徴 | 花崗岩・リモノー(砂・シルト・粘土)で育つピノノワールをセミマセラシオンカルボニック後プレス、発酵・熟成しました |
輸入元テイスティングコメント
深く透明感のあるレンガ色の入ったルビー色、マンダリンオレンジやハチ ミツ、アメリカンチェリー、ハチミツのアロマ、
高めの酸と摘みたてベリーのジューシーさ、控えめなタンニンとシャープなエキスに酸高の果実味、
エキスたっぷりで冷涼感のある味わいです。
最後はピノノワールの赤ワインです。さきほどとはまた区画の違う、平均樹齢12年と比較的若い木のブドウから造られています。
外観は、にごりのある茶色がかったガーネット。チェリーの控えめな香り。飲んでみると、やわらかな赤い果実の印象があって、さきほどのピノノワールよりも果実味が淡くやさしい印象です。
とはいえ、線が細いワインというわけではなく、トマトのような旨味や揮発酸からくるような酸もあって、ボディがしっかりしています。
また、にごりからくるものか、液体に手ざわり感のあるというのかエキス感よりもさらにもろみにふれるような口あたりでした。
色合いは茶色がかっていますが、熟成感があるわけではなく、タンニンは控えめでやわらかさがあります。重たさはなくて冷涼感があるため、これも夏に飲みたい赤ワインでした。
貴重なジュリアン・メイエーの上級ピノノワール!
ジュリアン・メイエーを飲み終えて
今回は、ジュリアン・メイエーの12種類をすべて飲みました。これだけ飲むとワイナリーの個性がくっきりとわかりますね。
ウィルトスのスタッフの方がおっしゃっていたのは、甘みのある香りやとろりとしたニュアンスがあったとしても、全体としては揮発酸を上手に使ってドライに仕上げているのが好印象ということでした。
揮発酸についてそういう使い方もあるのかと思いました。たしかにそれが個性となり、魅力の1つにもなっていました。
試飲した12種類のワインを大まかに分けると、リースリング、オレンジワイン、アルザス品種の白ワイン、ピノノワール中心の赤ワインの4タイプがありました。4タイプの印象は次のとおりです。
リースリング:酸とミネラルが豊富でキリッと引き立った白ワイン。ペトロール香は弱めでオイルっぽさがやや感じられる程度。香りの印象は涼しげで、ボディも引き締まっていて標高が高い地域のワインの感覚がある。
オレンジワイン:にごりがあってじんわりとしたエキス感と旨味もある。酸のバランスがよく、重たくならず心地よくまとまっている。
その他白ワイン:ミュスカ系とシルヴァーネルをテイスティング。香りや旨味はしっかり出ていながら、全体としては、酸があって透明感が強く出ている。
ピノノワール:ベリーの果実やタンニンが控えめで、全体的に涼やかな赤ワインに仕上がっている。しかし、線が細いわけではなく、旨味や酸味による厚みや満足感はある。夏におすすめの赤ワイン。ただ、豆が出る可能性がある。
品種の個性を持ちつつも、ジュリアン・メイエーの区画のワインはそれぞれこうなりますよ、というワインに仕上がっていました。こういう生産者の個性がわかるイベントには、また行きたいと思います!
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