2019年2月、ワインショップの店主が集う「東京ワインショップ会議」を開きました。それぞれが持つ悩みや知恵を持ちよって話しあうのが目的です。せっかく皆さんに集まってもらったので、「いまの東京ワイントレンド」をテーマに座談会をしていただきました。場所は、原宿sora anさんです。
【今回の出席者】
ラ・カンティーナ・ベッショ 別所さん、Anyway-Grapes 高橋さん、SASALA 出渡さん、
ラ・カンティネッタ多摩川 藤林さん、アンケヴィーノ 鈴木さん、カシエル 森さん夫妻
「オレンジ」「自然派」「ロゼ」がキーワード
ーー今回のテーマは、東京ワイントレンドです。最近、お客様から相談されるときによく出るキーワードはありますか?
高橋:「オレンジワイン」ですかね。どんなものか知らない、という人も含めてよく聞かれます。うちでは、オレンジワインコーナーも作っていますよ。
鈴木:それでいうと「ジョージア」という声も聞きます。オレンジワインつながりですよね?
オレンジワイン……白ブドウの種や皮を果汁と一緒に漬け込んで仕込むことで、オレンジの色合いになる白ワイン・ワインの原点をたどると発祥とされるジョージアでその醸造方法が取られていた。オレンジワインの発祥は、その原点回帰を図ったイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の生産者による。種や皮を一緒に漬け込むことで、SO2の添加をしなかったことから自然派ワインといえる(※オレンジワインのすべてが自然派ワインとは限りません)。
別所:やっぱり「ヴァン・ナチュール(自然派) 」なんですね。小さな生産者も増えてますし。
藤林:うちは、ほぼイタリア専門なんですが、オレンジもあるので出すようにはしてます。でも、あんまり自然派推しの人間でもないので・・・・・・。
高橋:自然派は、SO2無添加できれいなものもありますけど、売り手としてはバクテリアのリスクが気になります。そういうリスクを知ったうえで好んで飲んでくれる人ならいいけど、知らずに飲んでそうしたワインに当たってしまったら、ワインから離れてしまう。それは避けたいところです。
藤林:おっしゃる通り。お客様に売る以上は健全に飲めるもの、というのが前提ですね。
▲左からSASALA出渡さん、ラ・カンティネッタ藤林さん、Anyway-Grapes高橋さん、右奥はアンケヴィーノ鈴木さん
ーー自然派やオレンジワインのほかはどうですか?
高橋:タイプで言うと「ロゼワイン」の需要が伸びてきました。実は、ここ10年くらいロゼ推しで、辛口からフルーティなものまで揃えたロゼワインコーナーがあるんです。
藤林:僕も実はロゼ好き男子(笑) 。お店でも推してます。
別所:今日もSNSで勧めてたね(笑)
ーーロゼワインコーナーをつくっているお店は取材するなかでも増えています。かつての甘口というイメージが払拭されて、食事に合わせやすい辛口というのが浸透してきましたね。
出渡:うちの店にもロゼエリアあります!
鈴木:ロゼは5000~6000円くらいだと、ものすごくおいしいのありますよね。でも、3000円以上のロゼとなるとちょっとむずかしい気もしています。
藤林:ロゼに3000円というのは高く感じられるでしょうね。うちも、有料のグラステイスティングで勧めると飲んで くれますが、購入まではなかなか。
出渡:そこまでは踏み込めない。まだ1000円台のイメージがあるんでしょうね。
注目産地は東欧! 高騰するブルゴーニュに代わる産地は?
ーー産地はいかがですか?「ジョージア」という意見が鈴木さんから出ましたが?
藤林:イタリアでいうと「フリウリ=ヴェネチア・ジュリア州」。隣接した「スロヴェニア」も注目されていますよね?
高橋:「モルドバありますか」と言われることもあります。
ーー東欧エリアが人気というのは、取材したなかでも感じました。低価格で品質が高いことに加えて、知らない国は珍しさもあって、飲んでみたいという興味につながっているのかもしれません。ところで、いま、ブルゴーニュやボルドーが高騰していますが、その代わりにおすすめしているものや買われているものってありますか?
鈴木:「日本ワイン」はあると思います。ちょうど品質も高くて、おもしろいワイナリーが増えた時期も重なっています。
高橋:ブルゴーニュっぽいシャルドネということでは、「ジュラ」ですね。でも、ここ数年、お店で試飲会もやってきましたが、高騰しちゃいましたね。
森:うちはドイツ専門なんですが、最近ドイツではリースリングだけじゃなく、ピノ系品種の生産が2桁上がりで伸びています。そのなかには、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)もあるので、ぜひ「ドイツのピノ・ノワール」を飲んでほしいですね。
藤林:イタリア専門からすると、「トスカーナ」。エレガントなサンジョベーゼは、ブルゴーニュに匹敵すると思います。
高橋:ブルゴーニュと似た個性をもっているという意味では、「南アフリカ」はおすすめです。ただ、ミネラルが(石灰岩)土壌由来と海由来で異なるので、それが決定的な違いになっています。やっぱり、ブルゴーニュ好きにはブルゴーニュを、ボルドー好きにはボルドーを買い続けてもらいたいですね(笑)
家飲みや持ち寄り会が人気。東京は今、ワインブーム?
ーーお客様の買い方から、どんなワインの楽しみ方をされていると思いますか?
出渡:プレゼント需要は多いですね。5000円、1万円くらいでという。
藤林:ワインの持ち寄りパーティーも多いですね。
出渡:持ち寄りパーティーだと、高額なものより2000~3000円でインパクトあるものという選び方になりますね。
森:うちも、持ち寄りパーティーは多いですね。
高橋:持ちよりもレストランよりホームパーティーが中心。圧倒的に家飲みは増えたように思います。家でカジュアルに飲まれるようになっています。
別所:ワインがブームを超えて、定着の段階なのかも。街場のレストランを見ても、昔は寿司屋やそば屋にワインは置いてなかったけど、あるもんね。
高橋:ワインがライフスタイルに入ってきてますよね。ワインの消費量が伸びたかというと、横ばいだけど、間違いなく裾野は広がっています。うちは以前、2000円以上のワインしか置いてなかったけど、やっぱり家飲みだと、2000円以下にしたい。1500円から2500円くらいのデイリーコーナーはつくったら、本数は出るようになりました。
藤林:うちは家飲み用には、ボックスワインをすすめてます。3リットル4000円くらいなので、750ml換算だと1000円ちょっと。実際に売れてますね。
▲右がカシエル森さん
鈴木:うちは999円あります! やっぱり求められるお客様に対して、NOと言いたくないので。家飲みの需要は、本当にあると思っていて、特に私のようなママ世代は出歩けないんですね。実際に、友達に個性的なワインと上質なチーズなどのおつまみを紹介すると、「こういうのいいね」「知らなかった」と感動してもらえる。まだ、家飲みの上手な楽しみ方を知らない人もいるんです。
藤林:それすごいわかる!僕も子育て世代なので。
鈴木:働き方改革で帰宅時間も早くなってるし、そういう人にも利用してほしい。家だとリラックスして飲めますよね。うちは、授乳中でも飲めるノンアルワインも置いています。みんなが集まる場にワインがあって一緒に楽しむことは忘れないでほしいし、授乳が終わればお客様になってもらえる。まだまだ、小売りの可能性は、あると思ってます。
高橋:そうだね。うちは東京農大が近いんだけど、醸造学科があるからか「おいしいワインください」って、5000円握りしめてくる学生さんもいるんだよね。もう学割しちゃうくらいうれしい!
森:うちも学割、取り入れるか!
別所:いろんな世代の人にワインの楽しさを伝えていくのが僕らの仕事。小売りもがんばっていかなきゃね!
ーー東京にワインが浸透してきていることがわかってよかったです。ありがとうございました!
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