王のワイン・バローロを知るための基礎知識

バローロ

王のワインといわれるイタリアの「バローロ」。今回から4回に渡って、「初めてのバローロ」シリーズをお届け。一体どんなワインかを探ります。第1弾はバローロを知る下準備から。忘れてしまいがちなバローロの条件や産地の気候や村の特徴などを振り返りましょう。

第2回 4種類を飲み比べ!対談「バローロってどんなワインですか?」
第3回 イタリアワイン親父に聞く!バローロの買い方Q&A
第4回 イタリアワイン親父おすすめ!バローロを代表する生産者5選

目次

DOCGバローロの条件

ワインに“バローロ”と表示するためには、イタリアのワイン法DOCGの規定に則っている必要があります。大まかな条件はこちらです。
・ネッビオーロ種100%
・アルコール度数13.0%以上
・バローロは収穫年の11/1から最低38ヶ月熟成、うち18ヶ月は木樽で熟成させること
・バローロリゼルヴァは、収穫年の11/1から最低62ヶ月熟成、うち18ヶ月は木樽で熟成させること
・バローロ村周辺11のコムネ(村)で造られること
・特定クリュ(区画、畑=MGA)名をラベルに表示できる
このほか土壌や畑の標高、向き、ブドウの樹齢、生産量などにも規定があります。

バローロの地理・天候

バローロは、イタリア北西部のピエモンテ州南部にあるクオーネ県バローロ村周辺で造られています。「山の麓」を意味するピエモンテ州はアルプスの麓にあたり、全般的に冷涼な気候にあります。バローロ産地であるランゲ丘陵も、冬は厳しい寒さになりますが、ブドウの成長期は地中海からの風やアペニン山脈でアルプスからの冷気が遮られ、比較的温暖。昼夜の寒暖差がある大陸性気候ですが、冬は深い霧に覆われ、夏も嵐が起き、春と秋には降水量も増えます。

ランゲ丘陵の地形は多様で、バローロもその影響を受けます。ランゲ丘陵は、タナロ川の2つの支流が3つの丘陵を構成。下の略図に示した青い部分以外にもいくつもの谷があり、起伏のある地形が複雑な等高線を描き、同じバローロでも畑の場所や向きによって個性が生まれます。隣のバルバレスコよりも標高が50m高く、霧で日照時間が短くなることで、長熟型のワインに。ただし近年は気候変動がブドウの完熟を後押しし、ワインの味わいも変わってきています。この辺りは、ワインのほかにトリュフやヘーゼルナッツの産地としても知られ、秋の黄金色のブドウ畑とトリュフの香りはランゲ丘陵の風物詩です。

代表的な6つの村

バローロを育むランゲ丘陵は一枚の斜面ではなく、起伏に富んだ多面体のようになっています。そこに11の村があり、代表的なのが、ラ・モッラ、バローロ、カスティリオーネ・ファレット、モンフォルテ・ダルバ、セラルンガ・ダルバの5つです。最北のヴェルドゥーノは生産者は少ない小さな村ですが、秀逸なワインを生むため、6つの村をご紹介します。

ランゲ丘陵内の気候や土壌は、西側(1、2、3)と東側(4、5、6)で特徴が異なります。タナロ渓谷から吹き上がる風が暖かく、アルプスに近いランゲ丘陵南側が寒いため、西側が温暖、東側が冷涼となっています。土壌の特徴については、一般に石灰岩が多く混じっていますが、西側のエルヴィツィアーノ期の青い泥灰土は砂も混じった軽めの土壌、一方の東側はトートニアーノ期の灰褐色の泥灰土で鉄分が多い重めの土壌となっています。そのため、西側は華やかな香りでタンニンが柔らかな若飲みワイン、東側は力強くタンニンがしっかりした長熟タイプのワインができあがります。

それぞれの村内でも微気候(ミクロクリマ)があり、個性を持ったクリュが存在。偉大な畑として尊重されているものもあります。

ヴェルドゥーノ

最北のヴェルドゥーノは、華やかで透明感のあるワインを産出。生産者は少ないですが、優れたバローロができあがります。
有名畑:モンヴィリエーロ

ラモッラ

ヴェルドゥーノの南にあるバローロのコムネで最大の村。標高200〜500mの間に畑があるため、さまざまなタイプのワインができあがりますが、一般に華やかな香りで優美な個性を持つことが多くなっています。
有名畑:ブルナーテ、チェレクイオ、ロッケ・デッラヌンツィアータ

バローロ

優美な個性と力強さが両方ある、バランスのとれたバローロの典型といえるワインに。香りが高いのも特徴です。有名畑のカンヌビはバローロ村にあります。
有名畑:カンヌビ

カスティリオーネ・ファレット

一般に果実味やスパイシーさのあるバランスの良いワインを生みます。しかし、村の南側には、ロッケ・ディ・カスティリオーネなど有名な畑がいくつもあり、それらは香りが華やかな女性的なワインとなります。
有名畑:ヴィッレーロ、モンプリヴァート、ブリッコボスキス、ロッケ・ディ・カスティリオーネ

セラルンガ・ダルバ

ランゲ丘陵で最も東側にある細長い村。北側には王家の所有で「王のワイン」の由来となったフォンタナ・フレッダの土地があります。標高が高い畑もありますが、タオリディカスティリオーネ川からの暖気で、ブドウは完熟。がっしりしたタイプのワインとなります。
有名畑:ヴィーニャ・リオンダ、ラツィリート、オルナート、フランチャ

モンフォルテ・ダルバ

最も南にあるモンフォルテ・ダルバは、一般にパワフルで力強いバローロの産地です。ただ面積の広いブッシアの畑からは、華やかな香りの優美なワインができあがります。
有名畑:ジネストラ、モスカーニ、グラモレーレ

バローロの歴史

バローロが現在のような赤ワインになったのは、19世紀半ば。後にイタリア王国の初代首相を務めたカミッロ・ベンソ・カヴールが醸造家のフランチェスコ・スタリエーノを招き、それまで甘口の微発泡ワインだったスタイルを長熟可能な辛口赤ワインに醸造しました。ここ40年の大きなできごとは、1980年代のバローロボーイズの登場でしょう。そのあたりから現在までの流れについては、こちらを読んでみてください。

●主なできごと
1836年  バローロが現在の辛口長熟スタイルに
1920年代
〜30年代 フィロキセラ禍
1966年  DOC認定
1979年  レナート・ラッティがバローロ地図を出版。クリュの概念を確立
1980年  DOCG昇格
1980年代 バローロボーイズが登場
2014年  DOCGの新規定で、2010年ヴィンテージから181の追加地理的表示やサブゾーンが認証

醸造方法の特徴

1940年代から70年代までは1ヶ月程度のマセラシオンを経て、大樽(2000〜3000ℓ、さらに大きなものもある)で熟成される方法が主流で、現在、「伝統的」な製法と呼ばれるものとなっています。それに対して、80〜90年代に登場したバローロボーイズの醸造法は「モダン」や「現代派」と呼ばれることになります。バローロボーイズは、ロータリーファーメンター(回転式発酵槽)を使った短期間(4〜6日程度)のマセラシオンで、バリックという小樽(225ℓ)を使って熟成していました。しかし、現在はその両者ともスタイルに固執することなく、さまざまな手法が用いられています。また、かつては所有する別々の畑のワインをブレンドして1つのバローロにしていましたが、近年はクリュ(MGA)を表示し、畑の個性を打ち出したものもあります。

「初めてのバローロ」シリーズは全4回。あわせて読んでみてください!
第2回 4種類を飲み比べ!対談「バローロってどんなワインですか?」
第3回 イタリアワイン親父に聞く!バローロの買い方Q&A
第4回 イタリアワイン親父おすすめ!バローロを代表する生産者5選

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この記事を書いた人

編集長のアバター 編集長 ライター/ワインエキスパート

東京に暮らす40代のライター/ワインエキスパート。
雑誌や書籍、Webメディアを中心に執筆中です。さまざまなジャンルの記事を執筆していますが、食にまつわる仕事が多く、ワインの連載や記事執筆、広告制作も行っています。東京ワインショップガイドは2017年から運営をスタートしました。

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